新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者とSARS-CoV-2ワクチン接種者で、獲得する抗体の質や量に違いはあるのか。富山大学微生物学講座教授の森永芳智氏は両者で獲得した抗体について、同大学が確立した中和抗体評価(CRNT)法で定性評価を、市販の抗体検査で定量評価を実施。その結果、SARS-CoV-2ワクチン接種者の抗体量は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者の約60倍であることが明らかとなった。また、ワクチン接種後に獲得する抗体は変異株への中和能が従来株に比べ低い傾向が見られたものの、抗体量が多いことで、変異株に対する中和能が補完されている可能性があるという。なお、結果の詳細はmedRxiv(2021年5月27日オンライン版2021年5月30日オンライン版)に掲載された。

482人の血液検体で比較・検討

 森永氏は①SARS-CoV-2感染者②SARS-CoV-2ワクチン接種者―で獲得する抗体の質と量の違いについて、それぞれCRNT法および市販の抗体検査を用いて検討した。

 ①に関する研究では、同大学病院および富山市立富山市民病院を受診した患者482人(COVID-19患者74人、SARS-CoV-2陰性例179人、未スクリーニング例229人)の血清検体を用いた。CRNT法の中和能と抗体検査の抗体量のカットオフ値をそれぞれ50%阻害濃度(IC50:ウイルス複製の阻害作用が最大値の半分を示す際の濃度)、メーカー規定の値(0.8U/mL)に設定し検査を実施したところ、いずれもCOVID-19回復期(発症後10日以降)の患者を効率良く検出でき、両検査に相関が認められた(r=0.47、95%CI 0.20~0.68)。感度はCRNT法で95.8%、抗体検査で100%と高く、今回設定したカットオフ値を基準値に用いることとした。

 COVID-19回復期患者における抗体量の中央値は35.0U/mL〔四分位範囲(IQR)7.63~137.0U/mL〕だった。

 一方で、変異株(英国株および南アフリカ株)に対する中和能は約半数で基準値を下回っていた。

ワクチン接種後では変異株に対する中和能を維持 

 ②に関する研究では、SARS-CoV-2ワクチンのトジナメランを接種した同大学病院の職員740人(年齢20~69歳)の血清検体を用いた。①の研究で定めた基準値を用いて、CRNT法および抗体検査で2回接種後の抗体を調べた。その結果、全例が両検査に陽性を示した。

 ワクチン接種後に発熱などの全身反応が見られなかった、あるいは年齢が高めの場合に抗体量が比較的少なかった人がいたものの、CRNT法で評価した中和能は全例で80%を超え、中央値は99.9%超(IQR 99.9%超~99.9%超)と高値を示した。

 抗体量の中央値も2,112U/mL(IQR 1,275~3,390U/mL)と高く、COVID-19回復期患者に比べて60.3倍だった。

 また、変異株に対する抗体の中和能は従来株より低下するものの、いずれも基準値以上だった。

 両研究の結果から、森永氏は「SARS-CoV-2ワクチン2回接種者の抗体量は、COVID-19回復期患者の約60倍に上ることが明らかになった」と結論。また、両者とも変異株への中和能は従来株に比べ低い傾向が見られるものの、ワクチン2回接種者では変異株に対する高い中和能を有していた点については、「獲得する抗体量が多いことで中和能が補完されている可能性がある」との見解を示している。

(渕本 稔)

修正履歴(2021年6月8日):文献リンク先を修正しました