新型コロナウイルスの感染拡大収束に向けた切り札として、世界各国でワクチン接種が進められている。ただ、接種を取り巻く状況は国によって大きく異なり、コロナ禍克服へ残された課題はまだまだ多い。
 ◇6割超が難色―ロシア
 ロシアは昨年8月に世界に先駆けて国産ワクチン「スプートニクV」を承認。昨年12月には英国などに対抗するかのように大規模接種を開始した。
 英医学誌が今年2月にスプートニクVの有効性を確認するなど追い風が吹いたが、ロシア国内でワクチンの2回接種が完了した人は約1290万人と人口の8%程度にとどまる。最近の世論調査では、スプートニクVの「接種を受けるつもりはない」との回答は62%と「接種を受けるつもり」の26%を大きく上回った。
 プーチン大統領がワクチン承認後直ちに接種を受けず、3月の接種時にはその様子を公開しなかったことが国民の不信感を高めた。ロシアの最近の1日当たりの新規感染者は9000人前後。昨年末に連日2万人を超えていたのと比べて感染拡大のペースが落ち着いてきていることも接種が進まない理由と言えそうだ。
 ◇正常化進む―英
 昨年12月8日に他の先進国に先駆けて接種を開始した英国では、迅速な普及に成功し、社会の正常化が進んでいる。飲食店は通常通りの営業となり、海外旅行も解禁。順調に進めば、今月21日にはコロナ関連の制限が全て撤廃される見通しだ。
 既に成人男女の4分の3以上が少なくとも1回の接種を完了。今年1月のピーク時には1日で1000人以上がコロナで亡くなったが、最近ではゼロを記録する日もある。
 ジョンソン首相は「この半年間に全国の人々が接種に歩み出た結果、自由を取り戻すことができた」と胸を張る。
 ◇地域差顕著に―米
 昨年12月に接種が始まった米国では、接種回数が3億回近くに達し、人口の41.2%が接種を完了した。経済の正常化に向けた動きが加速している。しかし、接種をためらう人も少なくなく、ペースは鈍化。このため各自治体はビールの無料提供など、さまざまな促進策を打ち出している。
 バイデン政権は7月4日までに18歳以上の7割が接種を少なくとも1回受ける目標を掲げ、現在の接種率は63%。ニューヨーク・タイムズ紙によると、全米では目標を達成する見通しで、12州は既に7割に達した。一方、30州は達成できない可能性が高く、地域差が顕著になっている。
 ◇中国産から欧米へ―ブラジル
 感染第3波の到来が懸念されるブラジルは、ボルソナロ大統領がコロナ対策に消極的で、国際的なワクチン獲得競争で大きく出遅れた。結局、大統領の政敵で、独自に中国製ワクチン「コロナバック」の調達を進めていたドリア・サンパウロ州知事に頼る形で1月中旬から接種を開始。使用ワクチンの7割はコロナバックが占め、地元メディアによると今月1日までに人口の10.7%が2度目を終えた。
 しかし、ボルソナロ氏は5月5日、パンデミック(世界的大流行)は暗に中国が仕掛けた「新たな戦争」だと発言。これを受け、中国がワクチン原料出荷を渋ったため、製造が1週間にわたり停滞した。
 中国の「報復」に危機感を抱いた政府は今、欧米製に軸足を移し始めている。ボルソナロ氏は2日、英製薬大手アストラゼネカとの間で国内製造に向けた合意を結んだと発表。「今年中に希望するすべての国民が接種を受けることになる」とアピールに余念がない。(モスクワ、ロンドン、ニューヨーク、サンパウロ時事)。 (C)時事通信社