新型コロナウイルスのワクチン接種で、視覚障害者が予約に苦戦している。ヘルパーに知らされるまで接種券が到着したことに気付かないなど、予約の遅れにつながりかねないケースもあり、専門家は「それぞれに応じた伝え方を考えるべきだ」と話す。
 厚生労働省の2019年度調査では、身体障害者手帳を持つ視覚障害者は全国で約33万人いる。同省は今年3月、ワクチン接種をめぐる事務連絡で、視覚障害者向けの郵便物での点字表記検討などを求めたが、対応は自治体に任されているのが実情だ。
 福島県会津若松市で1人暮らしをする全盲の菊池正光さん(66)は、4月下旬に発送された接種券が届いたことに、ヘルパーが来るまでの約2週間気付かなかった。封筒に送り主を示す点字はあったが、接種券が同封されているという説明がなかったためだという。
 中の書類や10桁の接種券番号にも点字がなく、ヘルパーの助けを借りて予約した。菊池さんは「せめて電話が欲しかった」と話す。同市は7月以降の接種券発送について、65歳未満の視覚障害者には直接会って渡す方法に改めるとしている。
 当事者らでつくる「東京都盲人福祉協会」の笹川吉彦会長(87)も、書類に点字がなく協会職員に助けを求めた。視覚障害者の中には点字が読めず、音声案内が必要な人もいるといい、「手伝ってくれる人を派遣するなどの対応をしてほしい」と要望する。
 健常者と同じように先着順で予約することに戸惑う人もおり、全盲の高齢者から相談を受けたことをきっかけに、障害者専用の予約枠で受け付けを始めた自治体もある。
 慶応大の中野泰志教授(障害者心理学)は「想定できた事態で、当事者からの申し出があってからではなく事前に措置が必要だった」と指摘。「自治体は普段から調査を行うなどして、それぞれの障害者に応じた伝え方を考えておくべきだ」と話した。 (C)時事通信社