米・Ohio State UniversityのCurt J. Daniels氏らは、米国の大学スポーツリーグBig Ten Conference加盟校の運動選手1,597例を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の心筋炎の有病率とスクリーニング方法について検討。その結果、心筋炎の有病率は心臓症状のみに基づく(無症状者には臨床検査や心臓MRIを実施しない)方法を用いた場合は0.31%にすぎないが、症状の有無を問わず全例に心臓MRIを追加した場合は2.3%に上昇し、7.4倍になったとJAMA Cardiol2021年5月27日オンライン版)に発表した。

2.3%に心筋炎、多くが無症状

 SARS-CoV-2感染は心筋障害・心筋炎を引き起こすことが知られており、心筋炎は特に若年の運動選手における心臓突然死の主な原因になっている。そこでBig Ten Conferenceは、昨年(2020年)9月、加盟校の全ての運動選手に対し、SARS-CoV-2感染後の競技復帰の条件として心電図、心エコー、血清トロポニン検査(以下、臨床検査)に加え、心臓MRIを含む包括的心臓検査を義務付けた。さらに、大学生アスリートにおけるSARS-CoV-2感染の影響と感染後の安全な競技復帰に関する科学的検証を目的として、Big Ten COVID-19 Cardiac Registryを設立した。

 今回の解析対象は、昨年3月1日~12月15日にSARS-CoV-2陽性と判定され、心臓MRIを含む包括的心臓検査を受けた加盟校13校の運動選手1,597例(男性60.4%)。心筋炎の診断を、①症候性心筋炎(心臓検査の時点またはその前に心臓症状あり)②probableの無症候性心筋炎(無症状で心筋炎に一致する臨床検査の異常所見あり)③possibleの無症候性心筋炎(無症状で臨床検査の異常所見がなく心臓MRI異常所見あり)ーの3種類に分類した。

 心筋炎と診断された選手は37例(2.3%)で、27例(73%)が男性だった。診断の内訳は、症候性心筋炎が9例、無症候性心筋炎が28例(probable 8例、possible 20例)だった。

心臓MRIで心筋炎の検出が7.4倍に

 スクリーニング方法の比較では、心筋炎の推定有病率は心臓症状のみに基づく方法を用いたと仮定した場合が0.31%(1,597例中5例)、全例に臨床検査を行い異常所見が見られた者に心臓MRIを追加する方法を用いた場合が0.81%(同13例)にすぎないことが判明した。一方、全例に心臓MRIを行った場合の検出率は前述の2.3%で、症状のみに基づく診断と比べて7.4倍、臨床検査に基づく診断と比べて2.8倍に上昇した。

 また、37例中27例(73.0%)が初回SARS-CoV-2陽性判定後4~14週(平均9.4週)時点でフォローアップ心臓MRIを受けていた。その結果、11例(40.7%)で心筋炎に特徴的なMRI所見であるT2延長とガドリニウム遅延造影(LGE)の両方が消失しており、T2延長の消失は全例で認められた。16例(59.3%)では、T2延長は消失したもののLGEが持続していた。

感染後の安全な競技復帰のために

 Daniels氏らは「心臓MRIの利用可能性や読影の専門性、費用など多くの理由から、SARS-CoV-2感染後の全ての運動選手に心臓MRIを行うことは困難」と指摘した上で、「心筋炎の検査プロトコルと検出率は密接に関連しており、心臓MRIなしでは検出されなかった可能性のある症例が存在した」と結論。「安全な競技復帰のためのスクリーニングにおける心臓MRIの役割を詳細に検討すべきである。心臓MRIにより無症候性心筋炎を有するアスリートのリスク評価が改善される可能性があり、心臓MRIの正常所見により心筋障害・心筋炎を除外して安全な競技復帰を後押しできるというメリットもある」と付言している。

(太田敦子)