心筋梗塞(MI)発症後に一部の患者が訴える不安や抑うつ症状。スウェーデン・Uppsala UniversityのSophia Monica Humphries氏らは、そうした精神症状に対するインターネットを介した認知行動療法(iCBT)の有効性を検討し、結果をJ Med Internet Res2021. 23. e25465)に報告した。

MI患者対象に初のRCT

 MI発症後、退院から3カ月経過しても患者の約3分の1では不安症状や抑うつ症状が残るという。一方、冠動脈心疾患患者に対し精神療法を施行することで、通常治療に比べこれらの症状が緩和され、心臓関連死リスクが減少することも報告されている。そこでHumphries氏らは、オンライン介入による精神療法に着目。これまで報告がなかったとして、MI患者に対するiCBTの有効性について検討するランダム化比較試験(RCT)U-CARE Heartを実施した。

 対象は、2013年9月〜16年12月にスウェーデンの心臓専門クリニック25施設で定期受診(1〜8週の間)したMI患者3,928例。このうち2種類のHospital Anxiety and Depression Scale(HADS-DおよびHADS-A)のスコア7点以上、言語に問題あり、コンピュータに関する知識が低い、他の臨床試験に参加中などを除く239例を、iCBT群(117例)、通常治療群(122例)にランダムに割り付けた。

 主な患者背景は平均年齢がiCBT群は58.4歳、通常治療群は60.8歳、女性が順に44例(37.6%)、36例(29.5%)、就労中が78例(66.7%)、66例(54.1%)、向精神薬服用中が19例(16.2%)、20例(16.4%)などであった。iCBTは、心疾患患者向けに治療者主導の11項目(心配事への対応、恐怖と回避、行動活性化、コミュニケーションスキルなど)で構成され、それぞれに課題が盛り込まれた。

HADSスコアに有意な群間差なし

 14週にわたる治療プログラム終了後、MI発症1年時の不安および抑うつ症状や、非致死的心血管イベント発生または心臓関連死(最長5年間)を評価した。その結果、MI発症1年時の総合HADSスコアは両群で著明に減少し、有意な群間差は認められなかった(β=−1.14、95%CI −2.73〜0.45、P=0.16)。ただ、副次評価項目の1つである心臓関連の不安症状(Cardiac Anxiety Questionnaire)スコアにおいてのみ、通常治療群に比べiCBT群で有意な低下が示された(β=−2.58、95%CI −4.75〜0.42、P=0.02)。

 一方、非致死的心血管イベント発生または心臓関連死では、心臓関連死が2例(各群1例)、急性冠不全症候群が23例(iCBT群14例、通常治療群9例)、脳卒中が3例(同2例、1例)、血行再建術が24例(各群12例)、心不全が9例(iCBT群7例、通常治療群2例)であった。両者の複合アウトカムを検討したところ、両群に有意な群間差は確認されなかった(ハザード比1.8、95%CI 0.8〜2.8、P=0.25)。

 以上の結果から、Humphries氏らは「iCBTによる介入はMI発症1年時の不安および抑うつ症状に対して、通常治療より優れた有効性は示されなかった」と結論。加えて、「心臓関連の不安症状に対しては有効性が認められたものの、補正後は有意差が確認されなかった」と述べ、「治療アドヒアランスの低さが関与しているのではないか」との見解を示している。

松浦庸夫