新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大防止のため多数の大規模屋内イベントが中止され、地域経済に大きな打撃を与えている。感染予防措置を講じれば、屋内イベントの実施は可能なのか。スペイン・University Hospital Germans Trias i PujolのBoris Revollo氏らは、屋内イベント開催時における感染予防措置の有効性を検証するランダム化比較試験(RCT)を実施。SARS-CoV-2の抗原検出迅速診断検査(Ag-RDT)実施、N95マスクの着用、十分な換気といった対策下であれば感染リスクは抑えられるとの結果を、Lancet Infect Dis2021年5月27日オンライン版)に発表した。

抗原検査陰性者を参加する群としない群に割り付け

 大規模イベント開催当日のリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査によるSARS-CoV-2スクリーニング実施には、技術的・時間的な制約がある。一方、SARS-CoV-2のAg-RDTであれば、特別な検査機器を要さず、安価かつ短時間で検査結果を得ることができる。マスクの着用や適切な換気と併用すれば、大規模イベントでのSARS-CoV-2スクリーニングに有用な可能性がある。

 そこでRevollo氏らは、非盲検RCTを行い、大人数が集まる屋内イベントにおけるAg-RDTなどの感染防止対策の有効性を検証した。対象は、スペイン・バルセロナ市内で開催されたライブコンサート当日に実施したAg-RDTで陰性だった18~59歳の成人。鼻咽頭拭い液はライブ開始前12時間以内に採取した。年齢と性の層別ブロックランダム化により、対象を5時間にわたるライブコンサートに参加する群(介入群465例)と参加しない群(対照群495例)に1:1で割り付けた。14日以内に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された者、高血圧や糖尿病などの併存疾患のある者、高齢者と同居の者は除外した。

ライブ8日後に各種検査で感染状況を確認

 介入群はライブ会場の入り口で検温をし、ライブ中はN95マスク着用を義務付けた。会場内でソーシャルディスタンシングを保つ必要はなく、歌うこと、踊ることは許可した。会場内は十分な換気を行った。

 Ag-RDTと同時に転写媒介増幅(TMA)検査も実施。ライブ終了24~48時間後に得られた結果が陽性だった全例に対し、RT-PCR、Vero E6細胞を用いた培養細胞によるウイルス分離検査を行った。

 SARS-CoV-2検査の感度が最も高くなるのが曝露8日目であることから、ライブの8日後に再び鼻咽頭拭い液を採取。Ag-RDT、RT-PCR、TMAを行った。

 主要評価項目は、ライブ8日後のRT-PCRで確認された両群の SARS-CoV-2陽性率の差とした。

ライブ8日後の陽性率に両群で有意差なし

 検討の結果、対照群の15例、介入群の13例が、登録時のAg-RDTで陰性だったにもかかわらず、TMAでは陽性と判定された。TMA陽性例のうち、RT-PCRでも陽性だったのは各群1例。ウイルス分離検査は全例が陰性だった。

 ライブから8日後の検査では、対照群の2例(1%未満)がAg-RDTおよびRT-PCRで陽転した。一方、介入群では両検査とも陽転した例はいなかった。

 介入群と対照群におけるSARS-CoV-2陽性率のベイズ推定値は-0.15%(95%CI -0.72~0.44)で、両群のSARS-CoV-2陽性率に有意差は認められなかった。

厳しい条件下では安全性が示唆される結果に

 Revollo氏らは、今回の研究の限界として①参加者が監視下にあることを認識していたため、イベント中の行動が変わった可能性がある②当初は対象をイベント会場の最大収容人数(各群1,000例)としていたが、医療機関の指導で半数に減らさざるをえなかった③コンピュータの不具合で16例が研究に参加できなかった―点を挙げた。

 その上で、同氏らは「十分なSARS-CoV-2感染拡大防止策を講じれば、コロナ下でも屋内で大規模イベントを安全に実施できることが示唆された。コロナ禍で中止された文化・経済活動の再開につながる可能性がある」と結論している。

 ただし、今回の研究は換気の強化、イベント参加前の全参加者へのSARS-CoV-2スクリーニング実施、N95マスクの着用といった厳しい条件下で行われたもの。結果は大規模イベントの安全性に対し肯定的だったが、これを一般化することについては慎重になる必要があるだろう。

(比企野綾子)