ヤンセンファーマは6月3日、今年(2021年)3月に多発性骨髄腫(MM)を適応症として承認されたヒト型抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブとボルヒアルロニダーゼ アルファ配合の皮下投与製剤(商品名ダラキューロ®配合皮下注、以下、ダラツムマブSC)に関するメディアセミナーを開催。登壇した日本赤十字社医療センター(東京都)骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問の鈴木憲史氏は「患者および医療従事者の負担が軽減され、より多くのがん患者の治療が可能となる」と述べ、ダラツムマブSCに対する期待を示した。(関連記事:「ダラツムマブ皮下投与製剤が多発性骨髄腫で国内承認」

投与時間が大幅に短縮

 ダラツムマブは、NK細胞による抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用などを介した直接効果と免疫調整効果の「ダブルエフェクト」により抗腫瘍効果を発揮する新機序のMM治療薬。国内外のガイドラインで移植非適応の初発MMに対し、メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ(MPB)療法およびレナリドミド+デキサメタゾン(Ld)療法との併用が推奨されている。鈴木氏は「移植非適応例でも移植適応例と同等の無増悪生存(PFS)が期待できるなど、clonal evolution(単一の腫瘍クローンに遺伝子変異が段階的に蓄積し、生存・増殖の優位性がより高いサブクローンが選択され進展するという考え)を起こさせない薬剤として望ましい」と指摘する。

 一方、これまでダラツムマブには点滴静注製剤(ダラツムマブIV)しか存在せず、炎症やアレルギー反応といったinfusion reaction(急性輸液反応)を予防するため500~1,000mLの輸液が必要で、投与時間が約3〜7時間に上るなど患者の身体的・時間的拘束、医療者の労働負担が大きいという課題があった。そこで同社では、ダラツムマブとボルヒアルロニダーゼ アルファを配合したダラツムマブSCを開発。これにより、投与時間は約3〜5分と大幅に短縮できた。

心機能低下例などにも投与可能に

 ダラツムマブSCの有効性および安全性は、第Ⅲ相臨床試験COLUMBAで検証された。主要評価項目とした全奏効率(ORR)、最高血清中トラフ濃度(第3サイクルの1日目投与前)のいずれもダラツムマブIV群に対するダラツムマブSC群の非劣性が示され(図1)、安全性プロファイルも類似していた(Lancet Haematol 2020; 7: e370-e380 )。また、ダラツムマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(D-Kd)療法、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-Rd)療法、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロン(D-VMP)療法の既存レジメンでダラツムマブSCとダラツムマブIVを比較した第Ⅱ相臨床試験PLEIADESでも、同様の傾向が認められた〔第62回米国血液学会(ASH2020) POSTER #1380〕。

図1. 主要評価項目:ダラツムマブIV群およびSC群のORR

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Lancet Haematol 2020; 7: e370-e380)

 ダラツムマブSCの最大の特徴は、投与時間の大幅な短縮による患者および医療従事者の負担軽減である。COLUMBA試験に患者を登録した8カ国の医療従事者26人を対象にダラツムマブIV群とダラツムマブSC群への関与時間を調べたところ、ダラツムマブSC群において初回治療では約64%、2回目以降の治療では約50%の減少が認められた(図2)。また、投与に伴う患者の安静時間も、初回、2回目以降のいずれの治療でもダラツムマブSC群で97%減少していた(ASH2020 POSTER #3429)。

図2. ダラツムマブIV群およびSC群における医療従事者の関与時間

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(ASH2020発表データを基に編集部作成)

 これらの知見を踏まえ、鈴木氏は「ダラツムマブSCの登場による投与時間の短縮は、患者および介護者の負担軽減、ならびに医療従事者と医療施設の効率化につながることが期待される」と指摘。「輸液量に対する懸念があった心機能低下例やフレイル合併例への投与も可能になる」と展望した。

(平山茂樹)