新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では血栓症を合併する場合があるが、至適な抗凝固療法については確立されていない。米・Duke University Medical CenterのRenato D. Lopes氏らは、Dダイマー値が上昇したCOVID-19入院患者を対象に、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)リバーロキサバンによる治療的抗凝固療法とヘパリンによる予防的抗凝固療法の有効性および安全性を比較。「治療的抗凝固療法でCOVID-19患者の臨床予後を改善させなかった」とLancet2021年6月4日オンライン版)に報告した。(関連記事:「コロナの回復期でも血栓症、油断せず予防を」「コロナ関連血栓症、ヘパリンの至適用量は?」)。

出血リスクは増大

 Lopes氏らは、ブラジルの31施設にCOVID-19で入院し、Dダイマー値が上昇した18歳以上の患者615例を対象とした非盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。対象を治療的抗凝固療法群(治療群)と予防的抗凝固療法群(予防群)に1:1で割り付けた。治療群では、臨床的不安定例にはリバーロキサバン(1日当たり20mgまたは15mg)、低分子ヘパリンのエノキサパリン(1日当たり1mg/kgを2回)、未分画ヘパリン(目標抗Xa範囲0.3〜0.7IU/mL)のいずれかを投与し、その後30日目までリバーロキサバンを投与した。予防群では、標準治療としてエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを投与した。

 有効性の主要評価項目は死亡までの期間、入院期間、30日目までの酸素補充を要した期間とし、安全性の主要評価項目は30日間の大出血または臨床的に関連する非大出血とした。

 解析の結果、有効性は両群で有意差は認められず〔勝利比(win ratio)0.86、95%CI 0.59〜1.22、P=0.40〕、この傾向は臨床的安定例と不安定例で一貫していた。一方、安全性については、大出血または臨床的に関連する非大出血は予防群の7例(2%)に対し、治療群では26例(8%)と有意に多かった(相対リスク3.64、95%CI 1.61〜8.27、P=0.0010)。

 以上の結果を踏まえ、Lopes氏は「Dダイマー値が上昇したCOVID-19入院患者に対するリバーロキサバン単独またはエノキサパリンあるいは未分画ヘパリン併用による治療的抗凝固療法は、予防的抗凝固療法に比べて臨床予後を改善させず、出血リスクは有意に上昇した」と指摘。「エビデンスに基づいた適応がない場合、 COVID-19患者へのリバーロキサバンやその他のDOACの投与は避けるべきである」としている。

(平山茂樹)