改正国民投票法が11日に成立し、国会での憲法改正論議は新たな局面に入った。新型コロナウイルス感染拡大を受け、自民党は「緊急事態条項」創設に照準を合わせる。これに対し、立憲民主党は国民投票のCM規制に関する検討を優先するよう主張。改憲論議の先行きは見通せない。
 「緊急時に国民の命と安全を守るため、国家や国民の役割を憲法に位置付けるのは大切な課題だ」。菅義偉首相は10日、超党派の国会議員らによる改憲推進集会にビデオメッセージを寄せ、緊急事態条項の必要性を強調した。
 首相は緊急事態宣言の延長を表明した5月7日の記者会見でも「緊急事態への国民の関心は高まっている」と指摘。自民党内で改憲に消極的と見る向きも多い中、秋までの衆院選や再選を目指す党総裁選を見据え、保守層にアピールする思惑が透ける。
 党内の改憲派も呼応する。改正国民投票法の成立を受け、下村博文政調会長は早速、記者団に「憲法に緊急事態条項がないことが(コロナ対応の)スピード感を鈍らせている」と問題提起。「世論調査でも大勢が憲法上の対応を求めている」と訴えた。
 改憲論議の急速な進展を警戒してきた公明党にも変化の兆しが見える。党関係者は、緊急事態条項の是非が衆院選の争点となる可能性を指摘。党内から「従来の『加憲』だけでは駄目だ」との声が出始めていると明かした。ただ、山口那津男代表をはじめ慎重意見も根強く、「どこまで打ち出せばいいか落としどころを探っている段階」という。
 これに対し、立憲と共産、社民両党は慎重姿勢を崩さない。立憲の山花郁夫党憲法調査会長は11日、記者団に「優先順位は(国民投票の)CM規制だ」と主張。首相らが求める緊急事態条項に対し、「現行憲法でできないことが本当にあるのか」と疑問を呈した。
 共産党の田村智子政策委員長は会見で「(改正法成立で)改憲策動というわけには絶対にいかない」と反発。社民党の福島瑞穂党首は参院本会議での採決を棄権した。
 もっとも、日本維新の会と国民民主党は緊急事態条項の創設に積極的で、野党内も一枚岩ではない。
 改憲論議の本格化は早くても衆院選後となる。自民党関係者は、発議に必要な「3分の2」の議席維持について「与党だけでは難しい」としつつ、「コロナが国会を動かすかもしれない。大事なのは議席数ではなく国民の声だ」と語った。 (C)時事通信社