新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを制御するには、世界各国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種率を早急に向上させる必要がある。しかし、日本には国産のSARS-CoV-2ワクチンがないとはいえ、他の先進国に比べてかなりの後れを取っている。医療ガバナンス研究所のインターンで東京大学医学部6年生の小坂真琴氏らは、その背景には3つの要因が考えられると指摘。Lancet2021年6月2日オンライン版)に発表した。

ワクチン承認に関わる独自の規制が影響

 Our World in DataのCOVID-19ワクチン接種状況によると、2021年4月末までに少なくとも1回のワクチン接種を受けた者の人口に対する割合はイスラエル62%、英国51%、米国43%、ドイツ28%。一方、日本ではわずか2%、5月21日時点でも4%にすぎない。

 世界初のSARS-CoV-2ワクチンであるトジナメランが、英国や米国をはじめ高所得国で承認され接種が開始されたのは2020年12月。一方、日本で承認されたのは3カ月遅れの2021年2月14日。これは、日本での臨床試験に対する規制要件や独自の審査プロセスのためであった。

 さらに、日本ではCOVID-19の患者数が他国に比べて少ないため、ワクチンの有効性を評価する国際臨床試験に登録できていない。そこで、2021年4月時点で他のSARS-CoV-2ワクチンの臨床試験がまだ審査または進行中であることから、ワクチン承認に関する規制の見直しが検討されている。

ワクチンの輸入遅延のために供給が停滞

 ワクチンの確保にも遅れが見られた。日本政府はファイザー/ビオンテック社と2021年末までに追加分も含め1億9,400万回分のワクチンの供給を受ける契約を結んだが、生産ラインの一時停止やEUの輸出承認など幾つかの障壁に直面し、2021年4月末までに輸入されたのは2,800万回分であった。このワクチンの輸入の遅れが国民へのワクチン供給を滞らせることとなった。

ワクチン接種体制が不十分

 2021年2月17日にようやく接種が開始されたものの、5月6日までに使用されたワクチンは約420万回分、4月末までの輸入量の15%程度にとどまっている。日本では法的に予防接種の医療行為が認められているのは医師と医師の指示の下で実施する看護師のみであるため、多くの自治体でその人材確保に苦労している。また、通常の医療も提供している医療機関で個別に接種するには限界がある。そこで政府はコロナ下の特例措置として、歯科医師や自衛隊に所属する医療専門家などの助けを借りて大規模接種センターを立ち上げるなどの対策を講じている。

 政府は、2021年7月末までに高齢者への接種を完了することを目標に掲げている。小坂氏らは「この目標を可能な限り早く達成するには、ワクチン接種の遅れを解決する革新的な方法を考案する必要がある」と強調している。

(宇佐美陽子)