慢性腎臓病(CKD)患者ではうつ病の合併頻度が高いが、腎機能正常例を対象に抑うつ症状とその後の腎機能低下との関連について検討した研究はなかった。こうした中、中国・Southern Medical University Nanfang HospitalのZhuxian Zhang氏らは、腎機能が正常な成人でも重度の抑うつ症状がある者では、そうでない者と比べて腎機能が急速に低下するリスクが1.4倍高かったとの研究結果をClin J Am Soc Nephrol2021年5月29日オンライン版)に報告した。

対象はeGFR 60mL/分/1.73m2以上の一般住民

 CKDは心血管疾患、腎不全、死亡の主な危険因子の1つである。一方、中高年で高頻度に見られる精神疾患としてうつ病が挙げられるが、CKD患者ではうつ病を合併する頻度が高いことが報告されている。

 これまで、抑うつ症状と推算糸球体濾過量(eGFR)低下の関連を評価した研究は複数あるが、一貫した結果が得られていなかった。また、こうした研究の多くはCKD患者を対象としており、一般住民における抑うつ症状と腎機能低下との関連について検討したものはなかったという。

 そこでZhang氏らは、China Health and Retirement Longitudinal Study (CHARLS)の2011年、2013年、2015年のデータを用いて、腎機能が正常な一般住民における抑うつ症状と腎機能低下の関連を前向きに検討した。ベースライン時の抑うつ症状はCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)を用いて評価し、10点以上を重度の抑うつ症状と定義した。eGFRはクレアチニン値とシスタチンC値を組み合わせて算出した。

 対象は、ベースライン時のeGFRが60mL/分/1.73m2以上の男女4,763例(平均年齢59歳、男性45%、平均eGFR 89mL/分/1.73m2)。主要評価項目は急速な腎機能低下(eGFRの年間低下量が5mL/分/1.73m2以上と定義)とした。

CES-D 10点以上でリスク39%上昇

 ベースライン時に重度の抑うつ症状を有していた割合は39%(1,837例)であった。また、中央値で4年(四分位範囲3.92~4.00年)の追跡期間中に急速な腎機能低下が6%(260例)で発生した。

 主な人口学的因子、臨床的因子、心理社会学的因子を調整して解析した結果、ベースライン時の抑うつ症状と急速な腎機能低下には正の関連が認められ、CES-Dが5点増加するごとに急速な腎機能低下リスクは15%上昇することが示された〔調整後オッズ比(aOR)1.15、95%CI 1.03~1.28〕。また、ベースライン時のCES-Dが10点未満の群と比べ、10点以上の重度抑うつ症状を有する群では急速な腎機能低下のリスクが39%高かった(同1.39、1.03~1.88)。

 以上を踏まえ、Zhang氏らは「腎機能が正常な中国の成人において、重度の抑うつ症状と急速な腎機能低下との有意な関連が示された」と結論。また、「今後さらなる研究で今回の結果が裏付けられた場合は、これらのデータがCKD予防策の向上を目的とした抑うつ症状のスクリーニングや有効な心理社会的介入を支持するエビデンスになるだろう」と述べている。

(岬りり子)