新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)蔓延防止対策として、日本を含む各国でワクチン接種が進められている。アラビア半島のカタールでは、人口100人当たりのワクチン接種回数が、2021年6月13日時点で97回超と報告されている。同国・Ministry of Public HealthのRoberto Bertollini氏らは、SARS-CoV-2ワクチン接種歴や感染歴が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果に及ぼす影響を検証。その結果、ワクチン接種歴や感染歴はPCR陽性率の低下と関連するが一部に陽性例も見られ、獲得免疫は完璧ではないことが示されたとJAMA2021年6月9日オンライン版)に発表した。

対象は、カタールの空港到着時にPCR検査を受けた帰国者

 カタールでは、SARS-CoV-2ワクチン接種が進んだことから、2021年2月18日~4月26日に渡航制限を緩和するパイロットプログラムが実施された。これは、ハマド国際空港到着の少なくとも14日前までに2回のワクチン接種を終えた帰国者に対して、検疫を免除するというもの。ただし、プログラム期間中も出発国や予防接種の状況にかかわらず、国際線で同国に到着した全員がPCR検査を受けていた。

 Bertollini氏らは今回、同国内の医療情報データベースを利用し、SARS-CoV-2ワクチン接種歴や感染歴がPCR検査での陽性率を低下させるか否かを検証した。

 対象は、同空港到着時にPCR検査を受けた26万1,849例〔男性75.1%、年齢中央値33歳(四分位範囲27~41歳)〕のうち、到着の少なくとも14日前に2回のワクチン接種を終えた1万92例(ワクチン接種完了群)と、以前のPCR検査で陽性と判定されてから90日以上が経過している既感染の7,694例(既感染群)。以前のPCR検査で陽性判定後90日未満の者、ワクチンを1回しか接種していない者、2回目のワクチン接種後14日未満の者は除外した。

 両群と年齢、性、国籍(40カ国超)、検査日が一致したワクチン非接種かつ未感染群をそれぞれ1:1で選出し、PCR陽性率を比較した。

ワクチン接種完了群の0.82%、既感染群の1.01%がPCR陽性に

 その結果、ワクチン接種完了群のPCR陽性率は0.82%(95%CI 0.66~1.01%)で、ワクチン非接種かつ未感染群の3.74%(同3.37~4.12%)に比べ0.22倍と有意に低かった〔相対リスク(RR)0.22、95%CI 0.17~0.28、P<0.001〕。

 既感染群のPCR陽性率も1.01%(95%CI 0.80~1.26%)で、ワクチン非接種かつ未感染群の3.81%(同3.39~4.26%)に比べ0.26倍と有意に低かった(RR 0.26、同0.21~0.34、P<0.001)。ただし、両群とも1%前後と一定の割合で陽性例が認められた。

変異株への感染例も

 PCR陽性例の72検体をゲノム解析したところ、南アフリカ型変異株(ベータ株)が32検体(44.4%)、英国型変異株(アルファ株)が20検体(27.8%)、インド型変異株(デルタ株)が8検体(11.1%)特定され、従来株は12検体(16.7%)だった。

 Bertollini氏らは「国際線での帰国者を対象としたSARS-CoV-2のPCR検査結果から、ワクチン接種歴や感染歴はPCR陽性率の低下と関連することが示された」と結論。しかし、一定の割合で陽性例が確認された点について「ワクチン接種や感染により獲得した免疫は完璧ではない。したがって、空港では旅客に対しPCR検査の実施を継続する必要性がある」との見解を示した。さらに「今回の結果は、他の空港、地域、国内旅行には当てはまらない可能性がある」と付言している。

(比企野綾子)