喫煙は関節リウマチ(RA)の最も確立された危険因子だが、受動喫煙の影響は明らかでなかった。フランス・Université Paris-SaclayのYann Nguyen氏らは、同国の女性約1万人を対象に小児期/成人期の受動喫煙への曝露とRA発症リスクの関係について前向きコホート研究E3N-EPICで検討。その結果、「受動喫煙によりRA発症リスクが上昇することが示された」と欧州リウマチ学会(EULAR 2021、6月2~5日、ウェブ開催)で報告した。同氏は「RA予防のため、受動喫煙は可能な限り回避すべき」と述べている。

小児期の受動喫煙でRAリスクが24%上昇

 RAは女性に多く、環境要因と遺伝要因の相互作用により発症する自己免疫疾患である。喫煙はRAの主要な危険因子であり、抗​環状シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性者、特にヒト白血球抗原(HLA)-DRB1 shared epitope(SE)アレルを有する者では用量依存的な遺伝環境相互作用が示されている。しかし、これまでに受動喫煙とRAの関係について検討した研究はほとんどなく、一貫した結論は得られていない。

 E3N-EPICは1990年から、主に教師を対象とする国民健康保険の加入者で健康なフランス人女性9万8,995人を追跡し、同国における慢性疾患と関連する環境因子を検討する前向きコホート研究。Nguyen氏らはこれまでにE3N-EPICの予備的研究で、非喫煙者における小児期の受動喫煙への曝露とRA発症との関連傾向を示した〔ハザード比(HR)1.43、95%CI 0.97~2.11〕が、対象のRA患者は371例と少なかった。

 そこで同氏らは今回、E3N-EPIC登録者に12項目の自記式質問票を用いてRA患者を同定。小児期に1日に数時間たばこの煙臭い部屋にいたと自己申告した場合を小児期の受動喫煙、成人期に少なくとも1日1時間受動喫煙したと申告した場合を成人期の受動喫煙と定義。Cox多変量回帰モデルを用いて年齢、能動喫煙、成人期の受動喫煙、教育レベル、BMIなどの交絡因子を調整し、小児期/成人期の受動喫煙とRA発症リスクの関係について検討した。

 研究には7万9,806例(RA患者698例、非RA患者7万9,108例)を組み込んだ。平均年齢はベースライン時が49歳、RA診断時が65.2歳、ベースラインからRA診断までの平均期間は11.7年だった。

 受動喫煙者は4万7,036人(58.9%)、非受動喫煙者は3万2,770人(41.1%)。受動喫煙者の内訳は、小児期受動喫煙者が1万810人(13.5%)、成人期受動喫煙者が4万2,807人(53.6%)、そのうち小児期・成人期受動喫煙者は6,581人(8.25%)だった。

 小児期の受動喫煙とRA発症の関係を見ると、小児期の受動喫煙未経験者と比べて経験者ではRA発症リスクが24%有意に上昇した(HR 1.24、95%CI 1.01~ 1.51)。能動喫煙の有無別に見ると、未経験者では小児期の受動喫煙によりRA発症リスクが40%上昇した(同1.40、1.06~ 1.86)が、経験者では有意なリスク上昇は認められなかった。

 一方、成人期の受動喫煙とRA発症の関係を見ると、成人期の受動喫煙未経験者と比べて経験者ではRA発症リスクが19%有意に上昇した(HR 1.19、95%CI 1.02~ 1.40)。能動喫煙未経験者では成人期の受動喫煙によりRA発症リスクが27%有意に上昇した(同1.27、 1.02~ 1.57)が、経験者では有意なリスク上昇は認められなかった。

小児期の受動喫煙でRA発症年齢が低下

 RA発症リスクは能動・受動喫煙ともに未経験者に対して、喫煙未経験かつ受動喫煙経験者では33%(HR 1.33、95%CI 1.08~ 1.65)、喫煙経験者かつ受動喫煙未経験者では32%(同1.32、1.03~1.69)、能動・受動喫煙ともに経験がある者では50%(同1.50、1.22~1.84)、いずれも有意に上昇した。

 RA発症年齢と能動喫煙および小児期の受動喫煙の関係を見ると、能動喫煙者かつ小児期の受動喫煙経験者で有意に低かった(平均60.6歳)。能動喫煙と受動喫煙(小児期/成人期)との関係を見ると、能動・受動喫煙ともに未経験者で有意に高かった(平均66.5歳)。

 以上の結果を踏まえ、Nguyen氏は「小児期/成人期の受動喫煙への曝露は、RA発症リスクを上昇させることが示された。小児期の受動喫煙によりRA発症時期が早まる可能性がある。受動喫煙はRAの初期症状が認められる何年も前から、RA遺伝要因保有者の蛋白のシトルリン化を促進する可能性がある。したがって特にRAリスクがある人では、RAを予防するために受動喫煙を可能な限り回避すべきだ」と結論した。

(大江 円)