新型コロナウイルス感染拡大の抑え込みを図る緊急事態宣言が、沖縄県を除いて解除されることになった。東京都などでは新規感染者数が下げ止まりの兆候を示し、リバウンド(感染再拡大)も強く懸念される中での菅義偉首相の決断だ。東京五輪の開催を前提に、リスクの芽を摘みきれないまま感染対策を緩和する危うい賭けと映る。
 宣言解除に当たり、東京をはじめとする大都市部では今回、宣言に準じた対策が可能なまん延防止等重点措置に初めて移行する。政府は本来、宣言を解除するからには危険は去ったとの立場で、重点措置で厳しい対策を続けることは制度上、想定していなかった。今回の対応は、リバウンドの危険性を十分認識しているからに他ならない。
 政府の感染対策は、7月23日開幕の東京五輪をにらんで打たれてきた。実際、首相の「五輪ありき」の姿勢は明白だ。先の先進7カ国首脳会議(G7サミット)出席に当たり、五輪開催への各国首脳の支持取り付けに奔走。首脳宣言には「支持」が明記され、開催は国際公約となった。
 感染状況の評価が甘くなりがちな政府に、1カ月前には異論を唱えた感染症専門家らも、五輪開催を見定めたトップの強い決意には逆らわなかった。首相としては、「政府のコロナ対策は失敗」との烙印(らくいん)に直結する五輪中止や延期は、もともと視界になかったのだろう。
 政府は今回の決定に先立ち、重点措置解除後の大規模イベント観客数を1万人以下に制限する経過措置に専門家のお墨付きを得た。五輪開幕を控え、観客数の上限を決めるにはぎりぎりのタイミングとされるが、政府は五輪を想定した対応とは認めていない。きちんと説明して理解を得るプロセスの欠如が、国民の不信感を増大させている。 (C)時事通信社