【ニューヨーク時事】日本の製薬大手エーザイと米企業バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬の使用が、米国で始まった。病気の原因とみられる物質に働き掛ける世界初の薬として期待を集める一方、承認を決めた当局の判断や価格設定が物議を醸している。
 米メディアによると、臨床試験(治験)以外で新薬「アデュカヌマブ」を最初に投与されたのは、東部ロードアイランド州の70歳の男性。16日に投与を手掛けた同州の病院関係者は「新時代の幕開けだ」と喜びの声を上げた。
 これまでは症状を一時的に和らげる薬しかなかった。新薬は、脳内に蓄積してアルツハイマー病の原因になるとみられるたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」を除去する働きがあり、病気の進行をより長期間遅らせることができると期待されている。
 ただ、米食品医薬品局(FDA)が今月出した同薬の承認には異論も出ている。専門家でつくるFDAの諮問委員会は昨年11月、2種類の後期治験が矛盾する結果となったことを踏まえ、同薬の有効性が証明されていないと指摘していた。FDAは追加治験の実施を条件に承認を決めたが、諮問委の委員3人は決定に抗議し、辞任した。このうちの1人、米ハーバード大医科大学院のアーロン・ケッセルハイム教授は「最近の米国では最悪の承認判断だろう」とFDAを非難した。
 米国での同薬の価格は年間5万6000ドル(約617万円)に上る。医療保険などを通じて患者の負担は減るが、使用が増えれば財政負担が膨らむことが懸念される。ロン・ワイデン米上院議員(民主党)はツイッターに「有効性が証明されていない薬のために高齢者や納税者にこの額を課すのは、良心に反する」と投稿した。 (C)時事通信社