韓国・Seoul National University HospitalのJaewon Lee氏らは、米国の成人1万4,000人超のデータを用い、抑うつ症状の重症度と糖尿病の罹患率やコントロールの状況などとの関連を検討。その結果、抑うつ症状が重症になるほど糖尿病の有病率および自身の糖尿病罹患を認識している割合(自覚率)が上昇していたにもかわらず、重症者では糖尿病の治療を受けている割合(治療率)が低くコントロール不良であったとBMJ Open Diab Res Care2021;9:e002268)に発表した。

うつ重症群で糖尿病有病率・自覚率ともに2倍超

 解析対象は、2011~16年の米国民保健栄養調査(NHANES)に参加し、うつ病のスクリーニング〔Patient Health Questionnaire(PHQ)-9〕質問票に回答した20歳以上の1万4,328人。PHQ-9の総得点に基づき、対象を抑うつ症状の無症状群(0~4点)、軽症群(5~9点)、中等症群(10~14点)、やや重症群(15~19点)、重症群(20点以上)の5群に分類した。

 多変量ロジスティック回帰分析を、①患者背景(年齢、性、人種/民族)を調整したモデル1②モデル1に加え行動因子(BMI、喫煙、飲酒、身体活動度)を調整したモデル2③モデル2に加え社会経済因子(配偶者の有無、教育水準、世帯収入、健康保険の有無、過去1年間の医療の利用頻度)を調整したモデル3ーの3つのモデルで行った。

 その結果、糖尿病の有病率は抑うつ症状の無症状群における13.6%と比べて重症群で22.0%と高かった〔モデル1の調整後オッズ比(aOR)2.14、95%CI 1.29~3.56〕。抑うつ症状の重症化に伴う糖尿病有病率の有意な上昇がモデル1~3で一貫して認められた(それぞれP<0.001、P<0.001、P=0.003)。

 糖尿病の自覚率は、無症状群における71.3%と比べてやや重症群で86.2%に上昇(モデル1のaOR 3.12、95%CI 0.85~11.38)。抑うつ症状の重症化に伴う糖尿病自覚率の有意な上昇がモデル1~3で一貫して認められた(P=0.002、P<0.001、P=0.006)。

糖尿病コントロール率は半減、不健康な行動が増加

 一方で、抑うつ症状の重症群における糖尿病の治療率は50.1%で、無症状群の79.3%と比べて有意に低下していた(モデル3のaOR 0.25、95%CI 0.11~0.55)。

 また、糖尿病のコントロール良好者(HbA1c値7%未満)の割合は、無症状群の51.3%と比べてやや重症群で41.8%に低下(モデル3のaOR 0.51、95%CI 0.27~0.98)。抑うつ症状の重症化に伴う糖尿病コントロール率の有意な低下がモデル1~3で一貫して認められた(P=0.007、P=0.028、P=0.022)。

 さらに、糖尿病コントロールの妨げとなる不健康な行動に関わる因子を解析した結果、肥満は抑うつ症状の重症群では65.9%で無症状群の57.4%と比べて有意に高く、喫煙経験者(68.8% vs. 48.2%)および身体活動度低下(83.9% vs. 56.5%)の割合も有意に高かった(全てP<0.001)。

 以上を踏まえ、Lee氏らは「抑うつ症状が重症になるほど、糖尿病の有病率および自覚率が上昇したにもかかわらず、糖尿病の治療率やコントロール率は低下した。糖尿病に対する認識と管理に関するギャップは、糖尿病とうつ病を併発する患者、特に重症の抑うつ症状を有する患者に対し、現状では診断後のケアが不十分であることを浮き彫りにしている」と結論。「今回の結果は、身体と精神の両面にわたる、糖尿病とうつ病の包括的ケアモデルの必要性を示唆するものだ」と付言している。

(太田敦子)