新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した小児では、まれに川崎病様の症状を呈する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)を発症することが知られている。世界では既に約4,000例が確認され、免疫グロブリン療法(IVIG)の有効性が指摘されてきたが、エビデンスの少なさから治療法は確立されていなかった。6月16日付のN Engl J Med(オンライン版)は、MIS-Cに対するIVIGおよびグルココルチコイドの有効性を検討した多施設観察研究2件の結果を掲載。両者でIVIG+グルココルチコイドに対する評価は分かれる結果となった(関連記事:「新型コロナ小児のMIS-C、川崎病との違いは?」「コロナ感染で発生、小児多系統炎症性症候群」)。

米国の518例対象:IVIG+グルココルチコイドでリスク減

 1件目は、米国の病院58施設の研究者で構成されるThe Overcoming Covid consortiumによる報告(N Engl J Med 2021年6月16日オンライン版)。2020年3月15日〜10月31日にこの58施設にMIS-Cで入院した21歳以下の患者に関するサーベイランスデータを用い、初回免疫調整療法におけるIVIG+グルココルチコイドとIVIG単独の有効性を比較した。

 免疫調整療法を少なくとも1回受けたのは、MIS-C患者518例(年齢中央値8.7歳)。傾向スコアマッチング解析の結果、主要評価項目とした2日目以降の心血管機能障害(左室機能障害または血管収縮薬によるショックの複合)において、IVIG+グルココルチコイド群ではIVIG単独群に比べリスクが低下した〔17% vs. 31%、リスク比(RR)0.56、95%CI 0.34〜0.94〕。さらに、副次評価項目とした左室機能障害、血管収縮薬によるショック、補助免疫調整療法の施行のいずれにおいてもIVIG単独群と比べIVIG+グルココルチコイド群でリスクが低下していた。

32カ国・614例対象では有意差なし

 2件目は、32カ国の研究者で構成されるBest Available Treatment Study(BATS)consortiumによる報告(N Engl J Med 2021年6月16日オンライン版)。2020年6月〜21年2月に世界保健機関(WHO)のMIS-C基準に合致した小児を対象に、IVIGとグルココルチコイドの有効性を検証した。

 同基準に合致した小児患者は614例。IVIG単独群、IVIG+グルココルチコイド群、グルココルチコイド単独群、生物学的製剤を含む他治療群、非免疫調整療法群の5群に分けて比較したところ、主要評価項目とした呼吸補助あるいは死亡発生率の調整オッズ比(OR)は、IVIG単独群に対しIVIG+グルココルチコイド群が0.77(95%CI 0.33〜1.82、P=1.00)、グルココルチコイド単独群が0.54(同0.22〜1.33、P=0.70)だった。疾患重症度の調整ORは、IVIG単独群に対しIVIG+グルココルチコイド群が0.90(同0.48〜1.69、P=1.00)、グルココルチコイド単独群が0.93(同0.43〜2.04、P=1.00)だった。

 このように2件の報告で相反する知見が得られたことについて、米・George Washington University School of MedicineのRoberta L. DeBiasi氏は同誌のEditorial欄(N Engl J Med 2021年6月16日オンライン版)で、①対象患者層の相違②研究実施時期の相違③多施設研究という手法④レジメンの検討不足⑤長期におよぶ転帰の未評価―という5つの理由を提示。特に⑤については「MIS-C患者における心血管機能障害やその他の転帰について、体系的かつ包括的な長期フォローアップが切実に必要とされており、それは近々開始されるだろう」としている。

(平山茂樹)