東京五輪・パラリンピックの開幕が近づくにつれ、開催都市・東京都の小池百合子知事の言動が慎重さを増している。明快な「小池節」で開催経費削減に切り込んだかつての勢いはなく、観客の扱いなど国方針に追従する姿勢が目立つ。都庁内では、新型コロナウイルス対策による都財政の悪化や都議選をめぐる情勢変化が背景とみる向きもあり、「菅政権への配慮か」との声も漏れる。22日には「過度の疲労」による静養というニュースも飛び込んできた。
 「1兆(丁)、2兆、3兆って、お豆腐屋さんじゃないんです」。2016年7月、都知事選に出馬した小池氏は膨張する五輪開催経費に異を唱え、就任後は3競技会場の見直しに着手。結局会場は変わらず約400億円の費用圧縮にとどまったが、「これをむしろ(改革の)チャンスにしようと居直っている」と胸を張ってみせた。
 しかし、19年10月に浮上したマラソン競技の札幌移転では、大会組織委員会の森喜朗会長(当時)と国際オリンピック委員会(IOC)が都の頭越しに方針を決定。小池氏は「開催都市と協議もなく、突如提案された」と不快感を表明したが、強気な態度が一転した。
 今年4月の緊急事態宣言の発令後、五輪の中止や延期を求める声が相次いだが、小池氏は「安全安心な大会に向け準備する」など漠然とした説明に終始した。観客の扱いも「関係者と調整する」と繰り返し、今月21日の5者協議で「上限1万人」との国方針を追認。この場でようやく「状況に応じ無観客も検討」と言及した。密集の恐れがあるパブリックビューイングの中止表明も、埼玉、千葉、神奈川3県より遅れ、批判を招いた。
 都は21日、「まん延防止等重点措置」に移行し、飲食店の酒類提供が再開。都は当初、感染再拡大を恐れ、提供停止を続ける予定だったが、コロナ対策費の大半を握る国の再開方針に押し切られた形だ。
 7月4日投開票の都議選では、前回大敗した自民党が復調するとの見方があり、都幹部は「知事は五輪もコロナ対策も政権に抵抗できなくなっている」。一方で別の幹部は「知事が前面に出ないのは、大会期間に感染が急増した場合、自身への批判をかわす狙いもあるのでは」と語る。そうした中、五輪まであと1カ月に迫った段階での突然の「静養」。小池氏の今後の存在感に影響を与える可能性がある。 (C)時事通信社