イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らは、スタチン系薬を含む多剤を服用している65歳以上の高齢者を対象に、スタチン使用中止の臨床的影響を検証する後ろ向きコホート研究を実施。その結果、スタチン中止群では継続群と比べて心不全を含む心血管疾患による入院、緊急入院、全死亡のリスクが有意に上昇したとJAMA Netw Open2021;4(6):e2113186)に発表した。

心不全入院で24%、全死亡で15%のリスク上昇

 Rea氏らは、イタリア・ロンバルディア州の医療データベースから、同州在住で2013年10月1日~15年1月31日にスタチン系薬、降圧薬、糖尿病治療薬、抗血小板薬の多剤併用療法を受けていた65歳以上の高齢者を抽出。まず、他の薬剤の使用は継続しながらスタチンの使用を中止したスタチン中止群4,010例(平均年齢76.5歳、男性60.0%)を設定した。次に、1対1の傾向スコアマッチングを用い、スタチンを含む全ての薬剤の使用を中止しなかったスタチン継続群4,010例(平均年齢76.1歳、男性61.7%)を設定した。

 両群をスタチン使用中止の時点から2018年6月30日まで追跡し、スタチン使用中止の影響を検討した。追跡期間の平均値は中止群で20.6カ月(標準偏差10.0カ月)、継続群で20.4カ月(同10.1カ月)だった。

 評価項目は①脳血管疾患による入院②心不全による入院③虚血性心疾患による入院④脳神経障害による緊急入院⑤全緊急入院⑥全死亡⑦心血管疾患(脳血管疾患、心不全、虚血性心疾患の複合)による入院⑧心血管疾患による入院と全死亡の複合ーとした。

 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、スタチン中止群はスタチン継続群と比べて、心不全による入院で24%(ハザード比1.24、95%CI 1.07~1.43、P=0.004)、心血管疾患(複合)による入院で14%(同1.14、1.03~1.26、P=0.01)、全死亡で15%(同1.15、1.02~1.30、P=0.02)、全緊急入院で12%(同1.12、1.05~1.19、P=0.001)、それぞれリスクが有意に高かった。

 脳血管疾患による入院、虚血性心疾患による入院、脳神経障害による緊急入院のリスクについては2群間で有意差がなかった。

年齢、性、併存疾患、初発/再発予防目的を問わず

 また、層別化解析でスタチン使用中止と心血管疾患(複合)による入院、全死亡、全緊急入院の関連を検討した結果、年齢、性、併存疾患の状態、スタチンの使用目的(心血管イベントの初発予防または再発予防)による差は認められなかった。

 以上を踏まえ、Rea氏らは「多剤を服用している65歳以上の高齢者が降圧薬、糖尿病治療薬、抗血小板薬の使用を継続しながらスタチンの使用を中止すると、致死的および非致死的な心血管疾患のリスクが上昇することが示された。このリスク上昇は年齢、性、併存疾患の状態、スタチンの使用目的(一次予防、二次予防)を問わず認められた」と結論している。

 同氏らは「ロスバスタチン使用者を対象にした研究で、スタチン中止群は継続群に比べて脂質異常症の再発率が高いことが示されている。また、高リスク患者(急性冠症候群および虚血性脳卒中の患者、血管外科手術を受けた患者)ではスタチン使用中止が有害な転帰につながることを示す、強いエビデンスが複数の研究により示されている。これらのエビデンスは今回の結果と一致する」と付言している。

(太田敦子)