政府は、新型コロナウイルス禍で企業債務が増加傾向にあることを受け、金融機関同士の話し合いで返済猶予や減免を行う「私的整理」を利用しやすくなるよう対応策を検討する。私的整理ガイドラインの活用条件緩和など企業が事業再生や廃業に踏み出しやすい環境を整え、景気回復や生産性向上を図る。一方、銀行は安易な債権カットが増えかねないとして警戒感を強めている。
 企業の債務残高は2020年12月末に622兆円となり、前年同期比で52兆円増えた。実質無利子・無担保融資などコロナ禍での政府の資金繰り支援策で倒産件数は低水準に抑えられているものの、今後倒産が急増したり過剰債務に陥った企業が成長分野への投資を控えたりすれば、経済の停滞を招きかねない状況だ。
 そこで政府が成長戦略実行計画に盛り込んだのが私的整理の活用促進策の整備だ。私的整理は民事再生など法的整理と比べて事業価値を維持しやすく、将来の事業再構築につながりやすい。ただ、中小企業再生支援協議会が関わる私的整理は年1000件程度にとどまる。コロナ収束後に企業再編は増加するとみられ、スピード感のある債務処理策の検討が課題となっている。
 政府は今後、大企業や中堅企業を念頭に法制面での抜本的な対応を検討。中小企業向けには、現行の私的整理ガイドラインで示されている3年以内の債務超過解消の要件を5年以内に緩和するなど、新たな指針策定を検討する。
 これに対し、全国銀行協会の三毛兼承会長は「真に苦しんでいる事業者の再生につながる骨太の議論が必要だ」と指摘。銀行業界からは、政府の資金繰り支援策を担う中、将来的な債権カットの案件が増えかねない制度の検討は「矛盾している」(関係者)と戸惑いの声が上がる。見直しの内容次第では金融機関の財務基盤に影響を与えかねず、議論の難航が予想される。 (C)時事通信社