中外製薬は昨日(6月23日)、2019年に希少疾患用医薬品の指定を受け申請中だったリスジプラムが脊髄性筋萎縮症(SMA)の適応で承認されたと発表した。わが国では既に2剤が使用されているが、リスジプラム(商品名エブリスディ)は乳児~成人SMAに対する初の経口薬である。

病型は小児期発症の重症Ⅰ~Ⅲ型と成人期発症のⅣ型

 リスジプラムの効能・効果は脊髄性筋萎縮症。通常、生後2 カ月~2歳未満の患者に、0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与する。また、2 歳以上で体重20kg未満の患者には0.25mg/kgを、体重20kg 以上では 5mgを同様に投与する。

 SMAは筋萎縮性側索硬化症(ALS)と同じ運動ニューロン疾患で、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を呈する指定難病の1つ。病型は、小児期に発症するⅠ 型(重症型)、Ⅱ 型(中間型)、Ⅲ型(軽症型)および、成人期に発症するⅣ型に分類される。Ⅰ~Ⅲ型はsurvival motor neuron(SMN)蛋白の欠損につながる 5 番染色体の変異による劣性遺伝性疾患で、Ⅳ型は遺伝子的に複数の成因の混在が考えられている。

 リスジプラムは、全身に発現し運動神経と運動機能の維持に重要な役割を担うSMN 蛋白レベルを増加させ、維持することで SMAを治療する、初の経口薬である。

Ⅰ型乳児の9%が最低5秒間の支えなしでの座位保持

 リスジプラムの承認は2件の臨床試験の成績に基づいた。

 1つ目のFIREFISH 試験(2つのパートで構成)は、Ⅰ型SMAの乳児を対象とした非盲検ピボタル試験で、うちパート2(登録時の月齢1~7カ月、41例)はリスジプラムを2年間投与した後、非盲検下継続投与期間に移行するピボタル単群試験。 主要評価項目であるBayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition (BSID-Ⅲ)の粗大運動スケールによる支えなしの座位が少なくとも5秒間保持できた乳児の割合は9%(41例中12例)だった。また、24カ月時点で92%(38例中35例)が経口で栄養摂取が可能な状態を維持しており、探索的な解析から95%(同36例)に嚥下能力の維持が認められた。

 さらに、治療開始24カ月時点で93%(41例中38例)が生存しており、83%(同34例)の乳児が人工呼吸器の永続的使用なしに生存するなど、自然歴と比べ改善が認められた。

 主な有害事象は上気道感染、肺炎、発熱、便秘などで、主な重篤な有害事象は肺炎および呼吸困難が報告された。しかし薬剤関連の有害事象は認められなかった。

2~25歳のⅡ型、Ⅲ型患者の運動機能が改善・維持

 2つ目の承認の根拠は、2~25歳のⅡ型または歩行不能なⅢ型SMA患者を対象としたプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相国際共同臨床試験SUNFISHである。

 第Ⅲ相臨床試験ではリスジプラムを24カ月投与するリスジプラムを群(120例)または、プラセボを12カ月間投与後、リスジプラムを12カ月間投与するプラセボ→リスジプラム群(60例)に割り付けた。主要評価項目は、運動機能および日常生活への影響に関する複数の探索的評価(24カ月時点)とした。

 うち、神経筋疾患患者の運動機能評価尺度Motor Function Measure(MFM)-32は、12~24カ月にかけて改善・維持されいた。また、座位および歩行が可能なSMA患者の機能的運動能力を評価するHammersmith Functional Motor Scale-Expanded(HFMSE)も12~24カ月にかけて改善していた。

 12~24カ月における両群の主な有害事象は、上気道感染、鼻咽頭炎、発熱、頭痛、下痢、嘔吐、咳嗽。主な重篤な有害事象は肺炎およびインフルエンザであった。

2017年以降、SMA治療薬はわが国でも承認

 2017年、わが国初のSMA治療薬として登場したのはヌシネルセン(髄腔内投与)で、初の核酸医薬品として注目された。さらに昨年(2020年)、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療オナセムノゲン アベパルボベク(静脈投与による)が承認された。

 3剤目となるリスジプラムは経口薬であることから、幅広い年齢層での患者の在宅治療が可能となり、患者に加え家族の負担も軽減されるとみられる。

(田上玲子)