東京五輪の開幕まで1カ月を切った。新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する世論の逆風が吹く中、1年延期したスポーツの祭典を開催する意義とは。柔道選手として1980年モスクワ五輪のボイコットを経験した日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長に思いを聞いた。
 ―開幕が迫ってきた。
 東京招致が決まってから8年。延期が決まってからは想像しなかったような多くの試練を乗り越え、あと1カ月まできた。最後まで気を緩めないで、臨機応変に柔軟に対応していく。そういう形で世界中のアスリートが東京に集まって、開幕を迎えたい。
 ―開催の意義とは。
 日本国民に迷惑を掛けたくないので、海外から来る選手、スポンサーを含め多くの関係者にかなり無理な制限をお願いしてきた。反発はほとんどなかった。それほど五輪を開催してほしいということ。コロナで日本よりも大きなダメージを受けた国はたくさんある。世界のトップアスリートの活躍は、そうしたさまざまな国の人たちにとってもエネルギー、そして力になる。五輪開催は世界に対して公約したこと。最後の最後まで安全、安心の開催へ努力するのが日本の義務だと思う。
 ―反対論に選手も複雑な思いがある。
 感染対策はきちんと取っている。なぜ開催する、しないの対立構造になってしまうのか。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も全ての発言が正確に伝わらないこともあり、批判されてしまう。何より、選手個人を責めないでほしい。その責任はJOCや大会組織委員会が担う役割でもある。
 ―五輪は特別な大会か。
 五輪だけが特別ではない。でも、五輪に出たい選手はどれだけの思いでやっているのか。人生の全てを懸けてやっている。そのことだけは少しでも理解してほしい。モスクワ五輪で幻の日本代表となった人たちは、今でも傷を癒やせないでいる。
 ―JOCの存在感が薄いとの指摘もある。
 五輪は国家的なプロジェクト。国が前向きでなければ成功しない。スポーツ庁とも組織委とも連携し、できるだけ協力してやってきた。発信力がないと指摘されるのは、今後の改善点。
 ―日本選手団に求めることは何か。
 金メダル30個を目標にしていたが、コロナで前提条件が全て変わってしまった。30個以上取れるかもしれないし、取れないかもしれない。選手には自分の夢に精いっぱい挑戦してほしい。置かれた環境の中で最高のパフォーマンスを発揮して、生き生きと輝く。これ以上は求めません。 (C)時事通信社