同種造血細胞移植による急性白血病治療では、ドナーの免疫細胞により引き起こされる合併症である移植片対宿主病(GVHD)が課題となる。東京大学医科学研究所病院血液腫瘍内科の小沼貴晶氏ら、日本造血・免疫細胞学会のドナー別・移植細胞ソース別ワーキンググループは、日本造血細胞移植データセンターの登録データを後ろ向きに解析し、ドナー・移植細胞の種類によってGVHD発症時の生命予後への影響が異なることを解明。特に、臍帯血を移植した例では生存率が改善したとClin Cancer Res2021年6月22日オンライン版)に発表した。

急性白血病6,584例の移植後生存率を解析

 同種造血細胞移植により急性白血病の根治を目指す際には、①抗がん薬や全身放射線照射などの移植前処置②移植後に残存する腫瘍細胞に対するドナー免疫細胞の反応〔移植片対白血病(GVL)効果〕ーが重要とされる。一方で、予後不良因子であるGVHDの発症については、臨床的にGVL効果との相関が知られているものの、詳細は明らかでなかった。

 そこでワーキンググループは、日本造血細胞移植データセンターの登録データから2007~17年に初回の同種造血細胞移植を実施した16~65歳の急性骨髄性白血病患者4,521例および急性リンパ性白血病患者2,027例を抽出。ドナー・移植細胞の種類で急性GVHDと慢性GVHDに分け、GVHDの発症が再発率や生存率に与える影響を解析した。

非血縁臍帯血移植を行った軽度GVHD患者で、無病生存率が良好

 対象の年齢中央値は47歳、生存者の追跡期間中央値は41カ月だった。ドナー・移植細胞の種類は①ヒト白血球抗原(HLA)アリル一致血縁同胞1,322例②HLAアリル一致非血縁2,429例③非血縁臍帯血2,797例ーだった(①、②の移植細胞ソースは骨髄または末梢血幹細胞)。移植後3年時点での無病生存率と再発率は、HLAアリル一致血縁同胞移植が55%/34%、HLAアリル一致非血縁が58%/28%、非血縁臍帯血移植が54%/30%だった。

 次に、急性GVHDについて移植後100日を起点としてランドマーク解析を行ったところ、非血縁臍帯血移植を行ったグレード1~2の急性GVHD患者でのみ、GVHDを除く無病生存率が有意に良好であった(P<0.001、図A~C)。時間依存性共変量を用いた多変量解析においても、無病生存率の有意な改善が認められた(P<0.001、図D)。

 移植後129日を起点としてランドマーク解析した慢性GVHDについても、非血縁臍帯血移植を行った限局型慢性GVHD患者でのみ同様の結果が得られた(各P<0.001、図E~H)

図. 急性GVHDおよび慢性GVHDの重症度別に見たドナー・移植細胞の種類ごとの移植後無病生存率

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A・E:HLAアリル一致血縁同胞、B・F:HLAアリル一致非血縁、C・G:非血縁臍帯血、D:急性GVHDの重症度別に見たドナー・移植細胞の種類ごとの移植後無病生存率に対するハザード比、H:慢性GVHDの重症度別に見たドナー・移植細胞の種類ごとの移植後無病生存率に対するハザード比

東京大学医科学研究所プレスリリース

 非血縁臍帯血移植を行ったグレード1~2の急性GVHD患者および、限局型慢性GVHD患者では、全死亡、再燃、非再燃死亡が有意に抑制されていた(各P<0.001)。さらに、非血縁臍帯血移植による生存率の改善は、急性骨髄性白血病、移植時非寛解、HLA2座不適合といった患者で比較的認められることも分かった。

 ワーキンググループは「今回の知見が急性白血病に対する臍帯血移植のさらなる治療成績の改善や、臍帯血を用いた免疫療法の応用につながる可能性がある」と期待を示している。

(須藤陽子)