【マニラ時事】フィリピンが新型コロナウイルスワクチンの接種促進に苦戦している。接種率が低迷し、希望者は国民の3割強にとどまる中、一部の自治体がアメを用意。接種者に抽選で一軒家や牛を贈ることにした。一方、ドゥテルテ大統領は「拒む者を逮捕する」とムチをちらつかせ、物議を醸した。
 ワクチン接種は3月に始まった。2回目まで完了したのは6月27日時点で252万人。人口の2.3%にとどまり、東南アジアの中でも遅れている。5月の世論調査で「接種を希望する」は32%、「希望しない」は33%となり、政府目標の「年内に国民の7割接種」に影を落とす。
 首都マニラから北約50キロのパンパンガ州サン・ルイス町。約6万人が暮らす農業の町では、接種希望者がわずか20%だった。危機感を強めた町は7月から毎月、接種した町民に抽選で生きた牛を贈ることにした。サグム町長は時事通信の取材に「ワクチンの副作用を恐れる人は多いが、牛が呼び水になるはずだ」と期待を込める。
 マニラ首都圏のラスピニャス市も接種者への景品を導入する。1等は150万ペソ(約340万円)相当の土地付き一軒家、2等はバイクで、5000ペソ(約1万1400円)の食料品セットも用意した。
 「今は国の非常事態だ。接種しないなら逮捕する」。6月21日に放送された演説でドゥテルテ大統領は強硬策に言及。いら立ちを隠さず、「おまえらは害虫だ」とも付け加えた。
 現時点で逮捕された者はおらず、警察トップは「接種の重要性を強調しただけ」と大統領をかばったが、発言は責任転嫁だとの批判を浴びた。ナンシー・ビナイ上院議員は、接種会場に行列ができていることを挙げ、「国民の消極性ではなく、ワクチンの供給不足が最大の問題だ」と訴えた。
 フィリピンが28日時点で確保したワクチンは1645万回分で、人口の約15%相当。隣国インドネシアの同40%を大きく下回っている。 (C)時事通信社