2021年の路線価は、新型コロナウイルスの影響が色濃く反映された。全国平均は6年ぶりに下落し、インバウンド(訪日外国人旅行者)需要の消失などで観光地や繁華街は打撃を受けた。専門家は「昨年は日本経済が先行き不透明感に覆われ、地価がつまずいた」と指摘する。
 都道府県庁所在地の最高路線価の下落率上位3地点は、奈良市東向中町の大宮通り(12.5%)、神戸市中央区三宮町の三宮センター街(9.7%)、大阪市北区角田町の御堂筋(8.5%)と関西圏が占める。いずれもインバウンドなどで7年以上にわたり上昇が続いていた地域だ。
 奈良県を訪れる外国人観光客は、12年は約28.5万人だったが、19年には12倍の約349.5万人まで増えた。一方で、ホテルや旅館の客室数、宿泊者数は長年にわたり全国下位。日帰り観光が定着し、飲食や物販の消費は伸び悩んでいた。
 こうした状況を打開するため、県は大型ホテルの誘致などに取り組んできた。県内の客室数は19年までの4年間で1000室ほど増え、昨年は外資系高級ホテルなどの開業が相次いだ。昨年の路線価では上昇率が21.2%で全国4位となり、「遅れてやって来た地価上昇」(不動産関係者)との声も上がっていた。
 ところが、コロナで観光客は激減。地元の不動産鑑定士は「インバウンド向けのドラッグストアや土産物屋は客がゼロになり、飲食店も自粛で商売上がったり。地価に影響が出ている」と話す。
 日本不動産研究所の吉野薫不動産エコノミストは「インバウンド需要を中心に盛り上がってきた地域は強めのマイナスに転じた」と分析。ただ、昨年後半以降は下げ止まり感があるといい、「経済がある程度復調し、対面型サービスの需要が回復すると分かれば、地価も底入れから上昇に向かうだろう」と話した。 (C)時事通信社