治療抵抗性統合失調症治療に用いられる非定型抗精神病薬クロザピン。重大な副作用の1つである心筋炎の臨床的な特徴を明らかにするため、英・King's College LondonのAviv Segev氏らは大規模データを解析、その結果をBr J Psychiatry2021年6月10日オンライン版)に報告した。

24万例超から228例を抽出

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症治療薬のゴールドスタンダードとされる一方、血糖値の上昇や無顆粒球症などの重大な副作用リスクがあり、心筋炎もその1つに挙げられる。しかし、「クロザピンの副作用の多くは、心筋炎の臨床症状とオーバーラップするため、クロザピン誘発性心筋炎の臨床的特徴については明らかにされていない」とSegev氏ら。

 そこで同氏らは、同国・南ロンドン地区在住の精神科受診患者130万人以上が登録されたSouth London and Maudsley(SLaM)NHS Foundation Trustのデータベースから、2007〜19年2月に登録された24万7,621例のデータを抽出。トロポニン、心エコー図、心臓MRIなど各検査データに基づくアルゴリズムで心筋炎疑い例228例(254件)を特定、さらに循環器専門医のレビューにより①心筋炎確定群27例(29件)②心筋炎未確定群25例(25件)③心筋炎除外群176例(200件)―に分類した。

 各群の主な背景は平均年齢が心筋炎確定群36.87歳、心筋炎未確定群35.13歳、心筋炎除外群38.0歳、男性の割合がそれぞれ23例(85.2%)、15例(65.2%)、137例(71.7%)だった。なお、254件中241件(94.9%)がクロザピンを服用しており、5件(2.0%)はその他の抗精神病薬を服用し、8件(3.1%)は抗精神病薬未服用であった。

服薬開始6週間以内、CRPおよびトロポニンの上昇が特徴

 心筋炎発症時の症状(胸痛、不快感、息切れなど)、徴候(発熱、血圧、頻脈など)、検査データ〔C反応性蛋白(CRP)値上昇(10mg/dL以上)、トロポニン値上昇(基準値の2倍以上)、心エコー図所見など〕の各評価項目の心筋炎に対する感度および特異度について、心筋炎確定群と心筋炎除外群で比較した。

 受信者動作特性(ROC)曲線解析の結果、CRP値およびトロポニン値の上昇が心筋炎の診断において優れた有用性が認められた〔それぞれ曲線下面積(AUC)は順に0.896、感度33.3%、特異度96.7%、同0.975、83.3%、91.4%〕。

 続いて、心筋炎確定群におけるクロザピン服用から心筋炎発症までの期間を検討したところ、2〜42日間〔平均17.37日±標準偏差(SD)7.41日〕と、いずれも6週間以内に発症していた。

 以上の結果から、Segev氏らは「心筋炎の疑いはクロザピンの不要な中断を招きかねないが、われわれの解析により同薬服用患者における心筋炎は服薬開始6週間以内に発生しており、CRP値およびトロポニン値の上昇を伴うという臨床的特徴が示唆された」と結論。また、「心筋炎が疑われた症例の約80%が除外され、9.8%は確定診断に足る臨床データはなく、確定診断されたのは11.4%にすぎなかった」と付言している。

松浦庸夫