「光免疫療法」と呼ばれる新しいがん治療が、世界に先駆けて国内で始まった。光の作用でがん細胞だけを狙い撃ちにする仕組みで、副作用も少ないと期待される。現時点での対象患者は限られるが、開発者の小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員は「一日でも早く多くの患者に届けたい」と話す。
 光免疫療法では、がん細胞とだけ結合する抗体薬を活用する。点滴で投与した段階では無毒だが、近赤外光のレーザーを当てると化学変化し、「がん細胞のみをピンポイントに爆破する」(小林氏)という。テレビのリモコンなどに使われる近赤外光は人体に無害で、照射時間は数分間で済む。
 免疫機能を活性化する利点もある。壊れたがんのたんぱく質が周囲の細胞に吸収されるため、免疫が強化され転移を防ぐ効果も期待される。
 厚生労働省は2020年9月、光免疫療法で使う抗体薬「アキャルックス」を世界で初めて条件付きで承認した。最終段階の臨床試験(治験)が終わっておらず、安全性の検証を条件としている。
 適用対象は、他に治療法がない頭頸部がんの再発患者。外科手術では声帯などを摘出することもあるため、新しい治療法のニーズが高かった。
 今年1月に国立がん研究センター東病院(千葉県)で治療が始まっており、国内約20の大学病院などで受けられる。ピークとなる28年度には420人程度の治療が見込まれる。アキャルックスは創薬ベンチャー「楽天メディカルジャパン」(東京都)が製造販売する。
 関西医科大(大阪府)は22年4月に「光免疫医学研究所」を設立し、国内での普及を後押したい考えだ。所長に就任する小林氏は「これまでに大きな副作用は起きていない。改善を続け、将来はさまざまながんで使えるようにしたい」と話す。 (C)時事通信社