スウェーデン・Lund UniversityのRik Ossenkoppele氏らは、アルツハイマー病(AD)の各病期の患者1,431例を対象に、タウPETの予後予測ツールとしての有用性を検討。その結果、アミロイドβ(Aβ)陽性だが認知機能は正常な前臨床期(プレクリニカル期)および軽度認知障害(MCI)を呈する前駆期(プロドローマル期)の患者において、タウPETはアミロイドPETおよびMRIより優れた認知機能低下の予測ツールであることが示唆されたとJAMA Neurol(2021年6月28日オンライン版)に発表した。

MMSEの変化予測でMRIやアミロイドPETに勝る

 解析対象は、韓国、スウェーデン、米国のコホート研究8件の研究に登録された、Aβ陽性のAD患者315例、MCI患者271例、認知機能正常例253例、Aβ陰性のMCI患者172例、認知機能正常例420例の計1,431例(平均年齢71.2歳、男性52.5%)。

 ベースラインでタウPET、MRIによるADに特徴的な(AD-signature)大脳皮質厚の測定、アミロイドPETを行い、認知症スクリーニング検査のMMSE(Mini-Mental State Examination)スコアに基づく認知機能の変化を平均1.9年(標準偏差0.8年)追跡した。

 まず、発見コホート(1,135例、PETトレーサーにはタウ蛋白のイメージング用に開発された18F-flortaucipirを使用)の解析で、ベースラインの大脳皮質での18F-flortaucipir標準化取り込み値比(SUVR)が大きい例ほどMMSEスコアの年間低下率が大きく、タウPET所見が認知機能低下の予測因子になりうることが示された。

 次に、タウPET、MRI、アミロイドPETによるMMSEスコア変化予測を比較し、ブートストラップ法(1,000回反復)でR2値を検証した結果、全例(R2:タウPETは0.35、MRIは0.24、アミロイドPETは0.17)、Aβ陽性MCI群(同0.25、0.15、0.07)、Aβ陽性の認知機能正常群(同0.16、0.08、0.08)において、効果量はMRIおよびアミロイドPETと比べタウPETで有意に大きかった(全てP<0.001)。これらの結果は、再現コホート(296例、タウPETトレーサーは18F-RO948を使用)でも一貫して認められた。

早期において最適なバイオマーカーの可能性

 媒介分析では、ベースラインのMRI上の皮質厚がベースラインのタウPET所見とMMSEスコア変化との関連を媒介している可能性が示された。この媒介効果は、AD群(総合効果の33.4%、95%CI 15.5~60.0%、P<0.001)およびAβ陽性MCI群(同13.6%、0.0~28.0%、P=0.04)で認められたが、Aβ陽性の認知機能正常群では認められなかった(同3.7%、-17.5~39.0%、P=0.71)。

 また、年齢(t=-2.28、P=0.02)がベースラインのタウPET所見とMMSEスコア変化との関連に影響しており、タウPET所見が同等の場合には高齢者ほど認知機能の低下速度が速いことが示された。一方、性(t=0.92、P=0.36)、アポリポ蛋白(apo)E遺伝子型(t=1.06、P=0.29)の影響は認められなかった。

 以上を踏まえ、Ossenkoppele氏らは「プレクリニカル期およびプロドローマル期の超早期を含むAD患者において、タウPETはアミロイドPETやMRIよりも優れた認知機能低下の予測ツールであることが示された」と結論している。

 さらに、「タウPETとMRIによる認知機能変化の検出感度は、ADに至るとあまり差がないが、早期における検出感度はタウPETの方が高い。また、症状が現れる20年前から広範囲のAβ蓄積が始まっている可能性があるのに対し、新皮質でのタウ蓄積は一般的に臨床症状の発現時に観察される」と指摘し、「将来的な認知機能低下のリスクがあるAβ陽性例を特定し、プレクリニカル期およびプロドローマル期の症例の認知機能変化を予測する場合にタウPETが最適なバイオマーカーとなる可能性がある」と付言している。

(太田敦子)