新型コロナイウルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るい続ける中、治療薬の開発は喫緊の課題である。東京理科大学大学院理工学研究科応用生物科学専攻の塩野谷果歩氏らは7月1日に、抗マラリア薬メフロキンがCOVID-19治療薬候補として有望であるとの研究結果を同大学公式サイトで報告した。詳細は、Front Microbiol2021; 12: 651403)に発表されている。

承認薬27剤をスクリーニング

 現在、COVID-19治療薬の開発に向け、既存薬の中からCOVID-19に有効なものを見つけ出すドラッグリパーパシングでの研究が盛んに行われている。このうち、エボラ出血熱の治療薬として開発された抗ウイルス薬レムデシビルがCOVID-19治療薬として承認されている。他に、抗マラリア薬、抗HIV薬、インターフェロンなども、有効性評価のための臨床試験が進められてきた。

 塩野谷氏らは、承認済みの抗寄生虫薬・抗原虫薬27剤を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染細胞を用いてスクリーニング試験を実施。その結果、メフロキンの抗SARS-CoV-2作用が示された。

ヒドロキシクロロキンより高い抗ウイルス作用

 そこで、メフロキンをCOVID-19治療薬候補と位置付け、数種類の抗マラリア薬を対象にSARS-CoV-2増殖への影響を評価した。その結果、メフロキンとCOVID-19治療での緊急使用許可を取り消された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンで用量依存的に抗SARS-CoV-2活性が認められ、その活性はメフロキンでより強かった。

 また、ヒドロキシクロロキンの50%阻害濃度は1.94μM、90%阻害濃度は7.96μM、99%阻害濃度は37.2μMであったのに対し、メフロキンではそれぞれ1.28μM、2.31μM、4.39μM。同等の抗SARS-CoV-2活性を発揮するために必要な濃度は、メフロキンで明らかに低いことが示された。

ウイルス排除は6.1日短縮と推定

 複数の試験から、メフロキンは細胞に吸着したSARS-CoV-2が細胞内に侵入する過程を阻害することが示唆された。そこで、メフロキンとは異なりウイルスのゲノム複製過程を阻害する抗HIV治療薬ネルフィナビルとの併用投与を行った。その結果、異なる作用機序の2剤併用により、相乗的な抗SARS-CoV-2効果を得られることが示された。

 さらに、塩野谷氏らが作成した数理モデルから、標準治療で用いられる濃度のメフロキン1,000mg投与による効果を推定した。その結果、メフロキン投与により累積ウイルス量が6.98%まで減少し、ウイルス排除にかかる時間が6.1日短縮することが推定された。

 以上から、同氏らは「メフロキンがCOVID-19治療薬候補として有望であることが示された」と結論。「今後in vivo、臨床試験での検討が待たれる」と期待を寄せている。

(比企野綾子)