東京都で新型コロナウイルス感染拡大の勢いが止まらず、政府は4度目の緊急事態宣言発令に追い込まれることになった。専門家らの慎重論を押し切って6月21日で宣言を解除したばかりだっただけに、菅義偉首相の判断が問われるのは必至。政府は東京五輪を無観客で開く構えだが、緊急事態下の開催となることで、五輪への逆風が一段と強まることは避けられそうにない。
 「こういう状況になったら迷いなく判断する」。政府高官は7日、都内の感染状況の悪化を認め、宣言の発令はやむを得ないとの認識を示した。
 これに先立ち、首相は首相官邸で関係閣僚と対応を協議。続けて記者団の質問に応じ、開幕が23日に迫った五輪の観客の在り方について問われると、「(都や大会組織委員会などの)5者協議で決める」と述べるにとどめた。
 ただ、首相は今月1日、国民の安全・安心を最優先するとして「緊急事態宣言の時は無観客もあり得る」と明言したばかり。野党だけでなく連立を組む公明党も「無観客」を求めており、秋までにある衆院選への影響も考慮すれば、観客を入れる選択肢はもはや取りづらいのが現実だ。
 政府は都内に発令していた宣言を解除し、直ちにまん延防止等重点措置に移行した。強めの対策を講じつつ、解除後のリバウンド(感染再拡大)のリスクをあえて冒したのは、開幕まで1カ月余りとなっていた五輪を、観客を入れて開く可能性を追求するためだった。しかし、新規感染者数の増加は止まらず、7日には920人に達した。
 急速な感染再拡大を招いた首相の判断には、身内の自民党内からも「最悪の事態を想定するのが当然なのに、見通しが甘過ぎる」(関係者)と厳しい声が上がっている。専門家は早くから、都内の新規感染者数が7月中旬には1000人を超えるとの分析を示し、「宣言を出すか出さないかではなく、焦点はいつ出すかだ」と警告していた。
 政府はコロナ対策の柱と位置付けるワクチン接種でも、首相の号令の下、自治体や職域で作業の加速を促しながら、供給が追い付かず各地で停止を招く失態を演じた。先の東京都議選で自民党が過去2番目に少ない33議席にとどまったのも、政権批判の表れとみられている。首相が繰り返してきた「安全・安心な五輪の実現」が担保できなければ、開催自体に世論の批判が集中しかねない。 (C)時事通信社