五輪開幕まで2週間を切って開催都市に緊急事態宣言が出るという異例の局面で、首都圏1都3県における原則無観客が決まった。「安心、安全」とはかけ離れた状況にあっても開催自体の可否は論点にならず、あくまで観客の扱いだった。
 4月に示すはずだった国内観客数の判断は先送りされ、6月下旬に決めた収容定員50%以内で1万人の上限も条件付きだった。政府の方針に引きずられながら、数カ月が無為に過ぎた。
 上限5000人や夜間のみ無観客などの情報が流れ、世論を探るような動きがあった。そのたびに大会関係者は「小出し、小出しはやめてほしい」と嘆いていた。政府や組織委が観客にこだわった背景を「スポンサーのため。それしかない」と断じる。
 五輪関係者は3月に海外観客を断念した頃から、複雑になる運営を見越して「無観客にしてしまう方がいい」と話していた。6月に観客数上限が決まったときも組織委の飲食担当は短期間での準備に戸惑っていた。地方の一部会場には観客を入れることになり、時間的な猶予は少ない。
 大半の競技が行われる首都圏の会場を無観客にしても、「別枠」の関係者は会場で開閉会式や競技を見ることになる。チケットを持つ人や運営の現場などを散々振り回した末、ぎりぎりまで引き延ばした決断にも確たる軸はなかった。 (C)時事通信社