米・University of Connecticut School of PharmacyのYuani M. Roman氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗寄生虫薬イベルメクチンの有効性と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)について、システマチックレビューおよびメタ解析を実施。アジアや南米など8カ国で実施されたRCT 10件・1,173例を解析した結果、主に軽症のCOVID-19患者に対するイベルメクチンは、標準治療またはプラセボに比べて全死亡率、入院期間、ウイルス陰性化の改善を示さなかったとClin Infect Dis2021年6月28日オンライン版)に報告した。(関連記事「イベルメクチン誘導体で共同研究開発を開始」「新型コロナ治療薬、最新の開発状況を解説」「愛知医大・三鴨教授、イベルメクチンに期待」)。

2021年3月22日までの文献を検索

 世界保健機関(WHO)および米国感染症学会(IDSA)は、臨床研究を除きCOVID-19治療でのイベルメクチン使用を推奨していない。Roman氏らは、COVID-19患者の臨床転帰に対するイベルメクチンの有効性と安全性を評価するため、システマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 2021年3月22日までに掲載または査読前論文公開サイトに発表され、標準治療またはプラセボを対照として、COVID-19成人患者に対するイベルメクチンの効果を評価したRCTを、PubMed、MEDLINEなど5種のデータベースで検索し、逆分散ランダム効果メタ解析を行った。

 入院の有無にかかわらずCOVID-19成人患者を対象としたRCT10件(1,173例、平均年齢/中央値26~56歳、女性15~78%)を特定。RCTは、1件(スペイン)を除く9件がアジアや南米などの低~中所得国で行われていた。5件で標準治療、5件でプラセボを対照群としてイベルメクチン(投与量12~210mg、投与期間1~5日)と比較した。COVID-19の重症度(軽症8件、軽症~中等症1件、中等症1件)や評価項目はRCT間で異なっており、追跡期間は5~30日だった。

 主要評価項目は、全死亡、入院期間、有害事象。副次評価項目は、呼吸器検体における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陰性化、重度有害事象などとした。

 リスクオブバイアス(RoB)は、Cochrane Risk of Bias 2.0ツールを用い、各評価項目のエビデンスの質(QoE:高、中、低、非常に低の4段階)をGRADE法により評価した。

エビデンスの質は低いものの、全評価項目で改善せず

 解析の結果、イベルメクチンは対照群に比べて全死亡リスクを低下させず〔RCT 5件:相対リスク(RR)0.37、95%CI 0.12~1.13、I2=16%、QoE非常に低〕、入院期間も短縮しなかった(RCT 3件:平均差0.72日、同-0.86~2.29日、I2=0%、非常に低)。

 またイベルメクチンは、対照群に比べて有害事象(RCT 3件:RR 0.95、95%CI 0.85~1.07、I2=0%、QoE低)、重度有害事象(同3件:1.39、0.36~5.30、I2=0%、低)およびウイルス陰性化(同4件:0.96、0.79~1.16、I2=0%、低)に影響を与えなかった。

 COVID-19重症度またはRoB別のサブグループ解析の結果は、主解析とほぼ一致していた。バイアスリスクが高いRCT 3件のみで、イベルメクチン群における有意な全死亡リスク低下が示された(RR 0.18、95%CI 0.07~0.49、RoB交互作用のP=0.1)。

エビデンスのない薬剤使用を回避すべき

 以上の結果から、Roman氏らは「主に軽症COVID-19患者が対象のRCTにおいて、イベルメクチンは標準治療またはプラセボと比べて全死亡率、入院期間、呼吸器のウイルス陰性化までの期間の改善、有害事象および重度有害事象の減少をもたらさなかった。イベルメクチンは、COVID-19の治療選択肢として期待できず、臨床試験でのみ使用されるべきである」と結論している。

 同氏は「COVID-19治療薬として、これまでイベルメクチンや抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンなどの既存薬が非合理的に使用されてきた。エビデンスのない薬物使用の回避に向け、科学者、臨床医、コミュニケーターおよび政策立案者が協同で取り組むことが急務だ」と指摘している。

 また、イベルメクチンの安全性についてもさらなる検証が必要だとし、「他のCOVID-19治療薬と併用する場合を含め、イベルメクチンを長期間かつ高用量で投与した場合の安全性を評価する適切なRCTが必要になる」と述べている。

(坂田真子)