菅政権は前回の緊急事態宣言を解除してから、わずか3週間で4度目の発令に追い込まれた。新型コロナウイルス感染再拡大の恐れがあるとの警告に耳を貸さず、東京五輪を観客入りで開催したいという政治的な都合を優先させた結果と言われても仕方がない。政府は場当たり的な対応を繰り返して自ら信頼感を損ね、そのことが有効な対策を妨げる悪循環に陥っている。
 政府が6月に宣言を解除した時点で既に感染再拡大の兆候は出ており、対策の緩和には専門家の間でも否定的な見方が少なくなかった。ところが政府は、宣言から移行したまん延防止等重点措置を今月11日までで解除し、五輪の観客は1万人を上限とする算段だった。今日の結果を見れば、政府の想定と現実との乖離(かいり)は明らかで、見通しの甘さは否定しようがない。
 菅義偉首相はワクチン接種を対策の「決め手」と見定めて強力に推進し、政府関係者は「高齢者の感染者も重症者も少ない」と成果を強調する。しかし、新規感染者が東京都内だけで日々1000人に迫る現状で、短期的に重症者数が抑えられているからといって、「医療提供体制に問題はない」との説明に納得する人がどれだけいるのか。
 政府は今後、飲食店に時短営業や酒類の提供停止を改めて要請するが、感染再拡大の中でも五輪は開催するという「特別扱い」に反発は強く、限界が既に露呈している。こうした状況を招いた大きな要因は、五輪開催の意義をきちんと説明しようとしない政府自身にある。首相の言葉通り「国民の安全・安心が最優先」となっているのか、厳しく自省を求めたい。 (C)時事通信社