新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染によって獲得された中和抗体の効力は、時間の経過とともにどのように変化するのか。国立感染症研究所治療薬・ワクチン開発研究センターセンター長の高橋宜聖氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復者における中和抗体の経時推移を評価。その結果、COVID-19回復者は変異株に交差結合する抗体を獲得しており、その質は時間の経過とともに向上することが明らかになったと、Immunity2021年7月2日オンライン版)に発表した。

COVID-19回復者188例の血漿を評価

 SARS-CoV-2変異株には、回復者やワクチン接種者が獲得した中和抗体を逃れるものがあると報告されている。一方、高橋氏らはこれまでに、抗体応答において抗体の質が経時的に変化することを明らかにしているが、抗体のSARS-CoV-2変異株への結合性に及ぼす影響は分かっていない。

 そこで同氏らは今回、COVID-19回復者188例(19~92歳)を対象に、発症後1~2カ月(T1期)、2~4カ月(T2期)、5~7カ月(T3期)に採血を実施。発症から10カ月間のSARS-CoV-2中和抗体の量および質への経時的な影響を評価した。なお全例とも、国内で最初に変異株が検出される前の発症だったことから、従来株への感染と考えられた。

変異株RBDにも結合する抗体は減衰が緩徐

 初めに、主要な中和抗体が標的とするスパイク蛋白質の受容体結合ドメイン(RBD)に、南アフリカ型変異(ベータ)株で見られる3つの特徴的な変異(K417N、E484K、N501Y)を導入した変異株RBDを含むスパイク蛋白質を作製。従来株RBDのみに結合する抗体と変異株RBDにも結合する抗体を定量し、各抗体の経時推移を比較した。

 その結果、COVID-19発症から10カ月間で抗体は減少した。ただし、変異株RBDにも結合する抗体の減衰速度は、従来株RBDのみに結合する抗体に比べ緩やかで、持続性に優れていることが示された。この傾向は、COVID-19の重症度にかかわらず認められた。

変異株への中和比活性および交差性が経時的に上昇

 次に、変異株に対する中和比活性(抗体当たりの中和活性)と交差性(変異株に対する中和比活性)の経時的な推移をT1期とT2期で比較した。その結果、変異株への中和比活性と交差性は経時的に上昇。変異株に対する中和抗体の質が向上することが示された。

 以上から、高橋氏らは「ヒトの免疫系は、変異株にも適応力のある質の高い抗体の比率を、時間とともに上昇させることが可能である()」と結論。「今回の研究で明らかになった現象は、変異株に対するワクチン戦略を考える上で重要な知見となる」と付言した。

図.COVID-19発症後の中和抗体の総量と質の変化(概念図)

28537_fig1.jpg

(国立感染症研究所リリースより)

(比企野綾子)