東京五輪は緊急事態宣言下、首都圏1都3県会場が無観客という「異例の開催」(菅義偉首相)が決まった。海外メディアやインターネットでは、コロナ禍が収束しない中でのスポーツの祭典に関心が高く、決定に賛否が割れる。男子テニスのニック・キリオス選手(オーストラリア)は9日、「誰もいない会場で対戦することを考えたが、しっくりこない」と不参加を打ち明けた。
 ◇冬季五輪に自信
 「防疫が第一、試合は第二」「観客は必要ない。順調に開催できればそれでよい」
 来年2月に北京冬季五輪を控える中国では、決定を伝える国営新華社通信のサイトに無観客開催を「支持」するコメントが書き込まれた。中国外務省の汪文斌副報道局長は9日の記者会見で「順調、成功裏に開催することを支持する」と従来通りの発言にとどめ、無観客への論評は避けた。共産党機関紙・人民日報のサイトには、中国国内で新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んでいることを念頭に「中国だけが五輪を開催できる!」と来年の正常開催に自信を示す投稿もあった。
 人民日報系の環球時報(電子版)は9日、「日本国内の感染者は急増しており、病床が逼迫(ひっぱく)する可能性もある」と指摘。東京五輪が日本の夏季休暇と重なることにも触れ、流行拡大への懸念を伝えた。記事へのコメントとして「こんなに深刻な状況の中、経済的利益のために、各国選手の安全と健康を顧みないで開催するなんて日本の身勝手だ」との書き込みも見られた。
 ◇勇気ある決断
 2024年パリ夏季五輪を控えるフランスのメディアも、無観客とする日本政府の決定を相次いで報じた。仏公共テレビのサイトには、読者から「賢い選択だ」「難しいが勇気ある決断だ」と称賛するコメントが寄せられる一方、「理解不能で、ばかげた決定だ。記者や大会関係者も感染リスクは低くない」と批判的な意見もあった。
 さらに、観客を入れて感染者が続出するサッカー欧州選手権を引き合いに出し「日本人の方が勇敢だ。こちらも無観客にすべきだった」と反省する声も上がった。
 仏政府は6月にスタジアムの収容人数制限を解除するなど、コロナ感染防止規制を緩和したが、感染力の強いデルタ株が拡大しつつある。
 ◇国民に恩恵なし
 今回の無観客の決定は米主要メディアも関心を持って伝えた。ワシントン・ポスト紙は「苦悩してきた主催者や長引く不安を抱えるチケット所有者にとって悲しみの頂点」と報道。「空っぽの国立競技場は、五輪への多額の投資にもかかわらず、日本の国民や経済にはほぼ恩恵がなかった象徴となる」と論評した。
 CNNテレビは「緊急事態宣言下で、どうしてこのような巨大なイベントをやるのか、理解するのは難しい」(ジョージ・ワシントン大医学部のジョナサン・ライナー教授)と開催自体に疑問を呈する見方を紹介。ライナー教授は「日本は恐らく五輪を中止すべきだった」とも指摘した。
 一方、サキ米大統領報道官は記者会見で、無観客と決まったことについて「バイデン大統領は東京五輪の開催と、選手、スタッフ、観客を守るために必要な公衆衛生対策を支持する」と表明した。 (C)時事通信社