左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)の患者では、臨床的に認識されていない冠動脈疾患(CAD)および冠微小血管機能障害(CMD)の有病率が極めて高いことが示された。英・University of GlasgowのChristopher J. Rush氏らは、HFpEF入院患者106例を対象に行った多施設前向きコホート研究で検討した結果、心外膜CADまたはCMDあるいは両方が認められた患者は91%に上り、閉塞性CADが認められた患者の半数にはCADの既往歴がなかったとJAMA Cardiol2021年6月23日オンライン版)に発表した。

閉塞性CADない患者の81%にCMD

 Rush氏らは、3施設においてHFpEFで入院した連続106例(平均年齢72歳、女性50%)を前向きに登録し、侵襲的冠動脈造影およびガイドワイヤーによる冠微小血管機能検査、アセチルコリン負荷による冠血管反応性検査、心臓MRIを行ってCADおよびCMDの有病率を解析した(ただし、臨床状態や腎機能の悪化により一部の検査を行わなかったケースもある)。

 その結果、侵襲的冠動脈造影を行った75例中38例(51%、95%CI 39~62%)で閉塞性心外膜CADが認められ、38例中19例(50%、同34~66%)にはCADの既往歴がなかった。

 また、冠微小血管機能検査を行った62例中41例(66%、同53~77%)で内皮非依存性CMD(冠血流予備能2.0未満または微小血管抵抗指数25以上あるいは両方)、冠血管反応性検査を行った41例中10例(24%、同13~40%)で内皮依存性CMD(冠血管反応性異常、冠攣縮)がそれぞれ認められた。

 両CMDを合わせた解析では、53例中45例(85%、同72~92%)でいずれかのCMDが認められ、閉塞性心外膜CADを有していない患者においても36例中29例(81%、同64~91%)でいずれかのCMDが認められた。

心筋梗塞MRI所見の過半数で既往歴なし

 心臓MRIでは、アデノシン負荷心筋血流MRIを行った46例中14例(30%、95%CI 19~46%)で血流欠損像が認められ、心筋血流予備能指数(MPRI)が測定可能であった41例中29例(71%、同54~83%)で全体的な心筋血流障害を示す所見(MPRI 1.84以下)が認められた。

 ガドリニウム遅延造影(LGE)を行った52例中14例(27%、同16~41%)では心筋梗塞を示す心内膜下または貫壁性のLGE所見が認められ、このうち8例には心筋梗塞の既往歴がなかった。

 さらに、造影前後のT1マッピングを行った48例中20例(42%、同28~56%)で、びまん性心筋線維症を示す所見(細胞外液量30%超)が認められた。

 以上を踏まえ、Rush氏らは「HFpEF入院患者の91%が心外膜CADまたはCMDあるいは両方を有し、閉塞性CADを有していない患者の81%がCMDを有していた。HFpEF入院患者における閉塞性心外膜CADおよびCMDは、有病率が高い上に臨床的に認識されていないことが多く、治療標的になりうる」と結論している。

太田敦子