東京五輪の開催が迫る中、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた4度目の緊急事態宣言が12日、東京都で発令された。夜の歓楽街では仕事帰りの会社員らを熱心に呼び込む客引きの姿も。「効果はあるのか」。酒を提供する飲食店を締め付ける政府の措置に、苦境にあえぐ居酒屋店主や酒類問屋らは反発した。
 「お酒あります」。飲食店がひしめく夜の新宿・歌舞伎町では、従業員らが盛んに行き交う人々に声を掛けていた。都の感染防止ステッカーと「お酒OKです」の張り紙を並べて掲示した店も。都職員や警察官が「緊急事態宣言発令中」などと書かれたボードを手に練り歩き、若者らに帰宅を呼び掛ける姿も見られた。
 宣言に従い、酒なしで営業する焼き鳥店の店長は「裏手で目に付きにくい店は従っていない。都も指導する様子がない」と不満を漏らす。近くで飲食店向け広告会社を経営する男性(41)は「営業中の店に客が流れ、宣言の意味がない」と冷めた様子で語った。
 要請に応じ、同日から酒の提供をやめた台東区の居酒屋「天正」の女性店長(45)は「宣言に効果はあるのか」と憤りを隠さない。これまでも時短営業などを続けてきたが、効果を実感できなかったという。売り上げも感染拡大前の4割程度に沈んだまま。都内の五輪会場は無観客が決まり、「旅行者の需要もなくなった」と不安そうに語った。
 打撃は卸売業者などにも広がる。「酒だけが悪いのか。納得いかない」。中央区の酒類問屋には宣言決定以降、注文のキャンセルが相次ぎ、12日は開店休業状態となった。大会中も五輪会場周辺にある飲食店からの注文は見込めず、担当者は「相当の痛手だ」と肩を落とした。
 中野区の問屋「キョクジュ」の男性社長(56)は、政府が休業要請に応じない飲食店との取引停止を求めてきたことに、「商売自体を否定された気分。一度取引をやめると二度と購入してもらえない」と憤慨。五輪開催の一方で飲食業を厳しく規制する姿勢に、「あまりに矛盾が多過ぎる」と訴えた。 (C)時事通信社