高リスクの限局性または局所進行性前立腺がんに対する標準治療は放射線療法(RT)+アンドロゲン除去療法(ADT)だが、ドセタキセル(DTX)を上乗せすることで予後を改善するかについては明らかにされていない。米・Brigham and Women's Hospital/Dana-Farber Cancer InstituteのAnthony V. D'Amico氏らは、RT+ADTへのDTX上乗せにより、全生存期間(OS)の延長は示されなかったものの、RTによる二次発がんを抑制し、前立腺がん特異抗原(PSA)低値群でOSの改善が示されたことをJ Clin Oncol2021年7月1日オンライン版)で報告した。

RTによる二次発がんが減少し、PSA低値例でOS改善

 同検討は米国、オーストラリア、ニュージーランドの18施設で行われた第Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験。対象は①T2c〜4②T1b〜2bかつPSA値10ng/mL以上③Gleason score 7(4+3)以上④tertiary Gleason 5⑤Gleason score 7(3+4)以上かつ生検コア陽性率50%以上⑥PSA velocity 2ng/mL/年⑦生検またはX線所見による精囊浸潤―のいずれが1つを満たす前立腺がん患者。骨盤内RT既往を有する例と根治的前立腺全摘除術の実施例は除外されたが、ランダム化前4週間以内のADTは容認された。

 2005年9月21日〜15年1月13日に350例が登録され、Gleason scoreおよびPSA値で層別化後、RT+ADTを6カ月間実施する標準療法群(175例)とRT+ADTにDTX(RT前に60mg/m2を3週間隔で3サイクル、RT期間中は毎週20mg/m2を7サイクル)を上乗せするDTX群(175例)にランダムに割り付けられた。RTは1日当たり1.8Gyで39回照射された。主要評価項目はOS、副次評価項目は前立腺がん特異的死亡、無転移生存期間(MFS)、生化学的無再発生存期間(bRFS)などだった。

 追跡期間中央値は10.2年(四分位範囲8.00〜11.40年)で、解析時点で89例(25.43%)が死亡し(標準療法群45例、DTX群44例)、うち42例(47.19%)が前立腺がんによるものだった(それぞれ20例、22例)。OSは当初はDTX群で良好だったが、10年OSは標準療法群の74%(95%CI 66〜80%)に対しDTX群では72%(同63〜79%)と有意差はなかった〔ハザード比(HR)0.99、95CI 0.65〜1.51、P=.098〕。境界内平均生存期間(restricted meansurvival time;RMST)はそれぞれ8.82年、9.11年と、その差は0.29年(95%CI −0.19〜0.76年)にすぎなかった(P=0.22)。

 しかし、DTX群ではRTによる発がんが有意に少なく(HR 0.13、95%CI 0.02〜0.97、P=0.046、)、その他の二次発がんでは差がないことが示された(同0.89、0.50〜1.60、P=0.70)。また探索的検討では、PSA値が4ng/mL未満のサブグループにおけるOSの調整HRは0.27(95%CI 0.05〜1.34)であり、PSA値4〜20ng/mLのサブグループの1.51(同0.86〜2.67)と比べて有意に良好だった(P=0.05)。

図. RTによる二次発がん

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J Clin Oncol 2021年7月1日オンライン版

 毒性による治療中止は標準療法群の8例(4.60%)、DTX群の7例(4.06%)に認められた。急性の有害事象の発現率はそれぞれ10.34%、26.90%で、多くはグレード2〜3だった。標準療法群で治療に関連しない死亡が1例に認められた。遅発性の有害事象の発現率は標準療法群63.22%、DTX群67.25%で、多くはグレード1〜2だった。

 D'Amico氏らは「DTXはRTに対して腫瘍細胞の感受性を高める放射線増感作用を有するとされており、これによりRTによる二次発がんが抑制されるのではないか」と推察している。

安部重範

JCHO東京新宿メディカルセンター
副院長・泌尿器科部長 赤倉功一郎氏のコメント

 高リスク前立腺がんに対するホルモン併用RTにおいて、DTXの上乗せ効果があるかどうかを検討したランダム化比較試験の結果報告です。主要評価項目であるOSにおいては有意差がないという結果でした。

 しかし、興味深い点が2つありました。1つは、DTXによってRTによる二次発がんが減少したことです。その理由は不明ですが、もしも本当であれば臨床応用が可能と思われます。2つ目は、PSA値が4ng/mL未満の例において、DTXの追加により前立腺がん死亡が減少したことです。確かに、PSA値が高くない前立腺がんは通常とは異なった性質を有していることはしばしば経験されます。このような特殊な前立腺がんにはDTXの効果が期待できるのかもしれません。