免疫抑制薬で治療中の自己免疫疾患患者は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの臨床試験から除外されていたため、同薬とワクチンの免疫原性の関係についてはいまだ不明点が多い。英・King's College LondonのSatveer K. Mahil氏は、メトトレキサート(MTX)および生物学的製剤で治療中の乾癬患者におけるファイザー製メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン・トジナメラン1回接種後の免疫応答を調査。MTXを投与中の患者では抗体価が低下したと、Lancet Rheumatol2021年7月8日オンライン版)に報告した。(関連記事:「抗TNFα製剤でコロナワクチンの効果減弱」「リツキシマブ投与で中和抗体陽性率6割低下」)

抗体陽転率と抗体価の結果に乖離

 Mahil氏は、MTXあるいは生物学的製剤〔腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、インターロイキン(IL)-17阻害薬、IL-23阻害薬のいずれか〕単剤で治療継続中の乾癬患者を対象としたコホート研究を実施。対照群は、免疫抑制薬が未投与の非乾癬例とした。

 検討はトジナメランを接種している者を対象とし、SARS-CoV-2感染例とアストラゼネカ製ワクチン接種例は除外した。なお、TNF阻害薬の内訳はアダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、セルトリズマブ、IL-17阻害薬はイキセキズマブ、セクキヌマブ、IL-23阻害薬はグセルクマブ、リサンキズマブ、ウステキヌマブだった。

 2021年1月14日〜4月4日に、免疫抑制薬を投与中の乾癬患者84例(MTX群17例、TNF阻害薬群27例、 IL-17阻害薬群15例、 IL-23阻害薬群25例)、対照群17例が登録された。解析の結果、トジナメラン接種から28日後の抗体陽転率は対照群の100%(95%CI 80〜100%)に対し免疫抑制薬投与群では78%(同67〜87%)で、そのうちMTX群が47%(同21〜73%)、TNF阻害薬群が79%(同58〜93%)、IL-17阻害薬群が100%(同78〜100%)、IL-23阻害薬群が83%(同61〜95%)だった。

 一方、抗体価は対照群の50%抑制希釈317(四分位範囲213〜487)に比べ、MTX群では50%抑制希釈129(同40〜236)と有意に低かった(P=0.0032)が、TNF阻害薬群、IL-17阻害薬群、IL-23阻害薬群では活性が保たれていた()。

図. トジナメラン接種から28日後の抗体価

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Lancet Rheumatol 2021年7月8日オンライン版)

 なお、T細胞の免疫反応は全群で検知され、対照群に比べMTX群、TNF阻害薬群、IL-17阻害薬群、IL-23阻害薬群のいずれにおいても減弱しなかった。

 以上の結果について、同氏は「免疫抑制薬で治療中の自己免疫疾患患者においては、抗体陽転率のみでワクチンの免疫原性を十分に評価できない可能性があり、臨床現場で日常的に抗体陽転率を単独で参照することには注意が必要である」と指摘。「これらの知見が臨床効果にどう反映されるかは、実際の医薬品安全監視によって決定されるだろう」としている。

(平山茂樹)