チーム医療において重要な役割を担うとされる臨床薬剤師。精神科病棟の回診に加わることで、実際にどのような効果をもたらすのか―。スロベニア・Ormoz Psychiatric HospitalのMatej Stuhec氏らは最近のデータを解析し、ポジティブな結果が得られたとしてSci Rep2021; 11: 13641)に報告した。

精神科入院患者224例と臨床薬剤師の回診データを解析

 米国で誕生した臨床薬剤師は、従来の薬剤師とは異なる位置付けとして注目されている。個々の患者に合わせた薬剤の処方量や投薬のタイミングなどを医師に提案するなど、通常の薬品管理業務以外に医薬品のスペシャリストとして重要な役割を担っている。日本でも北里大学病院などが10年ほど前に導入し、普及しつつある。

 Stuhec氏らによると、中欧の精神科医療においては臨床薬剤師が病棟回診に加わることは一般的でないという。しかし、多剤大量処方や不適切処方が散見される精神科領域で臨床薬剤師の果たす役割は大きいとして、臨床薬剤師が病棟回診に参加するスロベニアの精神科病院のデータを解析し、臨床薬剤師が回診に加わる意義について検討した。

 2019年11月〜20年12月に同国北部に位置するOrmoz Psychiatric Hospitalに入院した精神疾患患者と勤務する臨床薬剤師の病棟回診データから、患者224例(平均年齢59.4歳)および回診75回・提案件数315件(4.2件/回)を抽出、解析した。なお、同院は病床数120床で、年間入院患者は1,000例(平均入院期間28日)。臨床薬剤師から精神科医に対する提案の採用率(acceptance rate)を主要評価項目、患者の退院後3カ月間の服薬遵守率(件数)、退院時までの薬剤関連問題件数(Drug-related problems;DRP)を副次評価項目とした。

精神科医の採用率は約94%、DRPは約94%の減少

 臨床薬剤師による提案件数315件の内訳は、用量調整が37.8%(119件)と最多を占め、次いで服薬開始時期と服薬中止がともに24.4%(77件)で多かった。提案を受けた精神科医の採用率は93.7%(295件)と高かった。

 患者の退院後3カ月間の服薬遵守率は70.5%(222件)と比較的高かった。処方薬別に見たところ、抗精神病薬が19.4%と最も多く、降圧薬が18.8%、抗うつ薬が16.8%、抗不安薬が8.2%、抗菌薬が7.0%、睡眠薬が4.1%、鎮痛薬・抗てんかん薬・β遮断薬がそれぞれ3.8%、その他が14.3%であった。

 提案件数315件中のDRPの内訳は、顕在的な(expressed)内容が56.2%(177件)、潜在的な(potential)内容が43.8%(138件)であり、臨床薬剤師の提案により実際のDRPはそれぞれ11件、9件とともに93.8%の減少が認められた。

 今回の結果を受け、Stuhec氏らは「中欧で初となる臨床薬剤師による病棟回診のベネフィットを検討したわれわれの研究により、臨床薬剤師から精神科医への提案は93.7%と高率に採用され、顕在的および潜在的なDRPを減少させる効果があることが分かった」と結論。それを踏まえ、「多くの欧州諸国の精神科病棟で臨床薬剤師の回診が導入可能だろう」と指摘し、大規模かつ前向き研究によりさらなる検証が必要との見解を示している。

松浦庸夫