【ジャカルタ時事】インドネシアで新型コロナウイルス感染が爆発的に拡大し、「医療崩壊」が起きている。どこにも入院できず車内で息を引き取ったり、一家全員が感染死したりするケースが続出。ジョコ大統領に謝罪や辞任を求める声が広がる中、政権幹部は批判を「ごみ」扱いし、強硬な姿勢を取っている。
 ◇世界最多
 ジャワ島中部のジョクジャカルタ特別州にある病院の駐車場で8日、48歳の女性が死亡した。容体が悪化したため車で4カ所の病院に行ったが、どこも満床。夜明けを待つ間に家族にみとられた。首都圏のブカシ市では6日、自宅で隔離中だった一家3人が相次いで死亡した。
 病床不足が引き起こした悲劇だが、地元メディアによると、同様のケースはジャワ島を中心に各地で頻発。「病院を数カ所回った末、やむなく患者を自宅に戻した」という救急隊員も少なくない。民間団体「ラポルCOVID―19」によると、14日までの1カ月半で617人が自宅隔離中に死亡した。
 病床不足は、5月の大型連休後の感染拡大がもたらした。1日当たりの新規感染者数は6月17日に1万人を超えた後、今月6日に3万人、14日には5万人を突破。ブラジルと世界最多を争う状況だ。過去1週間の死者数は1日800~1000人台で高止まりし、在留邦人も半月で9人が死亡した。
 政府高官は15日、「(新規感染者数が)1日10万人のシナリオを想定している」と説明。酸素や医薬品、病床の確保を進めているが、医師だけで3000人近く不足し、研修医や看護学生の卒業前倒しが検討されている。
 ◇国民と溝
 危機の高まりに政府批判が拡大している。ラポルCOVID―19や汚職監視団など主要民間団体は5日、連名で声明を発表。「医療崩壊で多くの命が救われなかったのはジョコ政権の失政だ。国民に謝罪し、法的・政治的な責任を取ってほしい」と訴えた。
 「政府は責任を取るべきだ」。故ワヒド元大統領の長女で、慈善団体を運営するアリッサ氏も請願を公開し、2週間で3万4000人が署名した。ツイッターには「大統領、諦めて(辞職して)」のハッシュタグが出現した。
 これに対し、大統領府のナバリン政治コミュニケーション次長はインターネット交流サイト(SNS)への投稿で「民主主義のごみが辞任を求めている」と一蹴。ムルドコ大統領首席補佐官も「コロナ禍で政治的ハエになってはいけない」と題した動画に出演した。ジョコ大統領は11日、「共に働き、助け合って乗り越えよう」と動画で呼び掛けたが、懸念を募らせる国民と政権との溝は深まっている。 (C)時事通信社