欧米の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究では、COVID-19患者の転帰が社会経済的背景により異なることが示されているが、日本でも同様の格差が確認され、欧米特有の傾向ではないことが示された。米・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのYuki Yoshikawa氏とIchiro Kawachi氏は、日本の47都道府県のデータを解析した結果、世帯収入が少ないなど社会経済的水準が低い地域で、COVID-19の罹患および死亡リスクが高かったとJAMA Netw Open2021; 4: e2117060)に発表した。今回の結果を踏まえ、「社会経済的弱者も新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種の優先対象として検討すべき」と提言している。

低収入、公的支援受給者、飲食業などで発症・死亡リスク上昇

 YoshikawaとKawachiの両氏は、一般公開されている政府調査データから、2021年2月13日までのCOVID-19確定症例数および死亡者数を抽出。さらに、都道府県別の平均年間世帯収入、ジニ係数(収入格差の指標)、公的支援の受給者の割合、学歴、失業率、不特定多数に接する頻度が高いサービス業(医療、小売業、運輸・郵便業、飲食サービス業)の従事者の割合、世帯の過密度(1人当たりの居住面積の狭さ)、喫煙率、肥満率を抽出し、それぞれ五分位に分類した。Poisson回帰モデルを用い、各五分位群間におけるCOVID-19発症・死亡のリスク比(RR)を算出した。

 その結果、2021年2月13日までに全国でCOVID-19と確定診断された患者は41万2,126例(10万人当たり326.7例)、死亡例は6,910例(同5.5例)だった。

 都道府県別の3因子(人口に占める高齢者の割合、人口密度、人口当たりの急性期病床数)を調整後のモデルによる解析の結果、物価の地域格差を調整後の世帯収入が最も低い地域では、最も高い地域と比べてCOVID-19発症・死亡のリスク上昇が認められた(発症の調整後RR 1.45、95%CI 1.43~1.48、死亡の調整後RR 1.81、95%CI 1.59~2.07)。また、公的支援の受給者の割合(同1.55、1.52~1.58、1.51、1.35~1.69)、失業率(同1.56、1.53~1.59、1.85、1.65~2.09)、小売業の従事者の割合(同1.36、1.34~1.38、1.45、1.31~1.61)、運輸・郵便業の従事者の割合(同1.61、1.57~1.64、2.55、2.21~2.94)、飲食サービス業の従事者の割合(同2.61、2.54~2.68、4.17、3.48~5.03)が最も高い地域で、最も低い地域と比べて同様のリスク上昇が認められた。

 さらに、その他の社会経済的因子(物価の地域格差を調整後の世帯収入、ジニ係数、公的支援の受給率、学歴、失業率)を調整後のモデルによる解析の結果、世帯の過密度(発症の調整後RR 1.35、95%CI 1.31~1.38、死亡の調整後RR 1.04、95%CI 0.87~1.24)、喫煙率(同1.63、1.60~1.66、1.54、1.33~1.78)、肥満率(同0.93、0.91~0.95、1.17、1.01~1.34)が最も高い地域で、最も低い地域と比べて同様のリスク上昇が認められた。

喫煙率と肥満率が死亡リスクに直接関連

 媒介因子の解析では、喫煙率および肥満率の高さがCOVID-19死亡リスク上昇に関連していることが示された。この関連は、都道府県別の3因子およびその他の社会経済的因子を調整後も認められ、喫煙率および肥満率がCOVID-19死亡リスクに直接関連していることが示唆された。

 また、喫煙率が公的支援の受給者の割合とCOVID-19死亡リスクとの関連を媒介していることが示された。YoshikawaとKawachiの両氏は「この結果は、日本の一般人口と比べて公的支援を受けている人口で喫煙率が高いというデータと一致する」と指摘している。

 以上を踏まえ、両氏は「日本におけるCOVID-19発症率および死亡率には各種の社会経済的因子が関連しており、欧米と同様の社会経済的格差が認められた」と結論。「日本のワクチン接種計画は医療従事者、高齢者、基礎疾患を有する者を優先接種対象としているが、ワクチン接種などのCOVID-19対策においては社会経済的弱者も優先対象とすべきである」と付言している。

(太田敦子)