千葉大学大学院泌尿器科学教授の市川智彦氏らの研究グループは、アミノ酸トランスポーターであるLAT3の発現量が前立腺がんの進行と密接に関わっているアンドロゲン受容体(AR)によって制御され、がんの進行や転移に関与する機序を発見。前立腺がんの進行メカニズムの一端が明らかになったことにより、LAT3が前立腺がんの早期発見や新たな治療標的となる可能性が示されたと報告した。詳細は、Cancer Sci(2021年5月9日オンライン版)に発表された。

LAT3は前立腺がんで多く発現

 前立腺がんの進行には男性ホルモン(アンドロゲン)が密接に関与しており、がん細胞内でアンドロゲンがARと結合することで、がんの進行に寄与すると考えられる。

 研究グループはこれまで、がん細胞におけるアミノ酸トランスポーターの機能解析と創薬についての研究を実施。LAT3については、前立腺がんに多く発現していることが知られているが、その機能は長らく不明だった。

 そこで今回、前立腺がんにおけるLAT3の機能、特にARとの関連に着目して検討した。

LAT3の発現が強い患者群で術後の再発率が有意に高い

 同研究ではまず、LAT3の発現がARによって制御されることを確認した。前立腺がん細胞に対し、アンドロゲンの一種であるジヒドロテストステロンを投与すると、LAT3 の発現が亢進。この現象は抗アンドロゲン薬ビカルタミドの投与により抑制されていた。

 続いて、網羅的RNAシークエンス解析により、細胞周期に関連するLAT3の新たな標的分子としてセパラーゼ(Separase)を同定。セパラーゼを介して、LAT3が細胞の増殖を制御することを明らかにした。

 また、前立腺がん患者におけるLAT3の発現と術後再発との関連を同大学病院の前立腺全摘標本を用いて免疫染色を行い、LAT3の染色の強度と臨床データとの関連を調べた結果、悪性度の高いがんでLAT3の染色がより濃くなり(図1)、LAT3の発現が弱い患者群と比べて強い患者群では、術後の再発率が有意に高かった(図2)。

図1. 手術検体のLAT3の免疫染色

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図2. LAT3の染色の強度と術後再発との関係

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(図1、2とも千葉大学プレスリリース)

 以上の結果を踏まえ、研究グループは「LAT3はARに制御され、前立腺がんの細胞増殖に関与することが分かり、前立腺がんの進行メカニズムの一端が明らかとなった。これにより、LAT3が前立腺がんの新たな腫瘍マーカーや治療標的となる可能性が示唆された」と述べている。

 研究グループは、これまでにがん細胞の増殖を促進させる他のアミノ酸トランスポーターである4F2抗原重鎖(4F2hc)が前立腺においてがん特異的に発現し、がんの転移や再発に関わることを解明。また、同大学病院の臨床試験部、泌尿器科学、薬理学の共同プロジェクトとして、標準治療抵抗性前立腺がん患者を対象に臨床試験も計画しているといい、「多様で複雑ながんの病態に対し、最適な治療方針や薬剤の開発が進むことが期待される」としている。

編集部