英・University of OxfordのTing Cai氏らおよび米・University of Southern Californiaの研究チームはスタチンによる心血管疾患(CVD)初発予防効果に関してシステマチックレビュー・メタ解析を行った結果、スタチンによって上昇する有害事象リスクは小さく、CVDイベント予防効果を上回るものではなかった。したがってスタチンは、CVD初発予防において"概して有益"であるとBMJ2021年7月15日オンライン版)に発表した。

肝機能障害リスクを33%上昇

 スタチンはCVDを予防する目的で広く使用されている。重篤な副作用の発生はまれだが、筋力低下やこわばりなどの軽度の副作用が発生する可能性があるため、多くの人はスタチン使用に消極的だ。スタチンの益と害のバランスを見ると、CVDの既往がある者ではスタチンのCVD再発予防効果は副作用のリスクをはるかに上回るが、CVDの既往がない者にとっては害が益をやや上回る可能性がある。しかし、最近のガイドラインではCVDの初発予防にスタチンのより広い使用を推奨している。

 今回Cai氏らは、過去のシステマチックレビューと2020年8月1日までにPubMed 、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsに登録されたCVD既往歴がない18歳超の成人を対象にスタチンと非スタチン、または異なる用量のスタチンを比較したランダム化比較試験(RCT)を同定。メタ解析により、スタチンによる有害事象のオッズ比と絶対リスク差(1万人・年当たりのイベント)を算出し、スタチン7種(アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)およびその用量別に有害事象リスクへの影響を調べた。

 主要評価項目は、自己申告による筋症状、臨床的に確認された筋疾患、肝機能障害、腎不全、糖尿病、眼症状などの一般的な有害事象。副次評価項目は、心筋梗塞、脳卒中、CVDによる死亡とした。

 解析にはRCT 62件、参加者12万456人(平均年齢61歳、女性4万8,610人)を組み入れた。追跡期間は平均3.9年。

 スタチンは自己申告による筋症状リスクを6%(対象としたRCT 21件、オッズ比1.06、95%CI 1.01~1.13)、肝機能障害リスクを33%(同21件、1.33 、1.12~1.58)、腎不全リスクを14%(同8件、1.14、1.01~1.28)、眼症状リスクを23%(同6件、1.23、1.04~1.47)上昇させた。これは1万人・年当たり筋症状15件(95%CI 1~29件)、肝機能障害8件(同3~14件)、腎不全12件(同1~24件)、眼症状14件(同2~29件)の増加に相当する。スタチンと臨床的に確認された筋疾患、糖尿病に関連は認められなかった。

脳卒中リスクを20%低下

 一方、スタチンは心筋梗塞リスクを28%(対象としたRCT 22件、オッズ比0.72、95%CI 0.66~0.78)、脳卒中リスクを20%(同17件、0.80、0.72~0.89)、CVDによる死亡リスクを17%(同22件、0.83、0.76~ 0.91)低下させた。これは1万人・年当たり心筋梗塞19件(95%CI 15~23件)、脳卒中9件(同5~12件)、CVDによる死亡8件(同4~12件)の抑制に相当する。

 スタチンの種類別に見ると、ロスバスタチンは自己申告による筋症状リスクを9%(対象としたRCT 13件、オッズ比1.09、95%CI 1.01~1.16)、腎不全リスクを13%(同11件、1.13、1.00~1.28)、糖尿病リスクを14%(同4件、1.14、1.00~1.30)、眼症状リスクを26%(同2件、1.26、1.04~1.52)上昇させた。アトルバスタチンは肝機能障害リスクを41%(同17件、1.41、1.08~1.85)、ロバスタチンは同リスクを81%(同5件、1.81、1.23~2.66)上昇させた。

肝機能モニタリングが必須

 ロバスタチンはフルバスタチンとプラバスタチンに比べて肝機能障害リスクが高く、アトルバスタチンとロスバスタチンはピタバスタチンに比べて糖尿病リスクが高かった。しかし、スタチンの種類によるリスクの差は小さかった。

 用量反応関係についてメタ解析を行ったところ、アトルバスタチンにおいて肝機能障害に対する用量反応関係が認められた。非スタチンに対するアトルバスタチンの肝機能障害リスクは2倍k〔最大オッズ比2.03、95%確信区間(CrI)1.03~12.64〕だった。他のスタチンと有害事象に用量反応関係は認められなかった。

 以上を踏まえて、Cai氏らは「スタチンによるCVD初発予防において、有害事象リスクの上昇は小さく、CVDイベント予防効果を上回らなかった。益と害のバランスの観点から、スタチンによるCVD初発予防の有益性が示唆された」と結論。「スタチンによる有害事象リスクは小さく、スタチンの種類や用量の違いによるリスクの差もほとんどないため、CVD初発予防へのスタチン使用をやめることも、安全性のために治療開始時にスタチンの用量を調整する必要もない」と付言した。ただし、CVD初発予防にスタチンを使用する際は、ルーチンの肝機能モニタリングが必須であると指摘している。

(大江 円)