【ワシントン、北京時事】16日にオンライン形式で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)臨時首脳会議では、新型コロナウイルス危機下で重要性が高まる「デジタル貿易」が隠れたテーマとなった。バイデン米政権は中国に対抗するため、日本などアジアの民主主義国との広範なデジタル貿易協定を検討中とされる。米中貿易戦争の本格化から今月で3年。大国間の対立は「第2幕」に入りそうな情勢だ。
 「質の高い協定に米国の参加を促す良い機会になる」。APEC議長国ニュージーランドのアーダーン首相は閉幕後、国際協調を掲げるバイデン大統領が「アジア重視」を表明したことを歓迎した。APECには環太平洋連携協定(TPP)に署名した11カ国も参加しており、米国との連携に期待をにじませた形だ。
 バイデン政権はAPEC会議直前に布石を打っていた。米国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官は6日の講演で「デジタル分野で何ができるか」検討していると突如表明。日米間では昨年1月にデジタル貿易協定が発効しており、同様の協定をアジアで拡大する可能性もある。TPP議長国を務める日本は、米国の構想を注視している。
 デジタル貿易協定は、国境を越えた電子商取引や、デジタル製品の関税の扱いなどを定める。バイデン政権は、データ保護強化を理由にIT企業を締め付けたり、技術移転を強要したりする中国を排除し、国際ルール作りを主導する構えだ。APEC会議が採択した首脳声明も、デジタル分野で「信頼を高める重要性」に言及した。
 こうした動きに中国は猛反発した。習近平国家主席はAPEC会議の演説で、デジタル分野を念頭に「封鎖と排他、対立と分裂は袋小路に入り込む」「デカップリング(分断)を進めるべきではない」などと訴え、対中制裁を連発する米国を暗に批判した。米国が構想を描く「中国抜きのデジタル貿易協定」には、TPP参加に意欲を示した中国をけん制する狙いもある。 (C)時事通信社