昨年(2020年)と比べ、国内での報告数が大幅に増加しているRSウイルス感染症は、家庭内や保育施設などでの集団感染が多いことが知られている。しかし、これまで近親者間における感染リスクの経時的変化に関する報告は十分でなかった。東北大学大学院微生物学分野教授の押谷仁氏らの研究グループはフィリピン熱帯医学研究所およびシンガポール国立大学とともに、家庭内感染のリスクを検討する前向きコホート研究を実施。家族の1人がRSウイルスに感染すると、症状が出る前の期間を含めて約7日以内に家庭内感染が発生するケースが多いとし、Am J Epidemiol2021年7月3日オンライン版)に報告した。

172人とその家族を前向きに追跡

 今回の研究ではフィリピン人451人を登録し、フィリピンでRSウイルス感染症が流行した2018~19年に、登録者における咳や呼吸困難などの症状を観察した。症状がある場合は、鼻から排出されるウイルス量を測定するために鼻腔拭い液を採取・検査して感染の有無を確認した。RSウイルス感染が確認された172人・42世帯の家族について、定期的にデータと検体を採取し、家庭内での感染の広がりを検討した()。

図. 従来の研究方法と今回の研究で用いた方法の比較

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グラフ内の点はウイルス量の実測値、実線は推定された排出ウイルス量を表す。右のグラフの青い部分は、推定された排出ウイルス量の95%CI

東北大学プレスリリース

家庭内感染の3割は無症候感染者からの可能性

 検討の結果、排出ウイルス量の変化から、ほとんどの感染イベントは家庭内曝露から約7日以内に発生しており、さらに家庭内感染の約3割は、最初の感染者に症状が表れていない段階で起きることが推測された。また、5歳未満の乳幼児への感染リスクは、5歳以上の3.5倍だった。

 研究グループは、今回の知見から「患者が発症してRSウイルスへの感染が明らかになったときには、家庭内や患者が属する施設内に他にもRSウイルスに感染し発症前の段階にある人が存在する可能性が高い」と指摘。「こうした背景を踏まえた対策が必要だ」とし、家庭や施設での重点的な感染予防対策の実施につながることに期待を示した。

(須藤陽子)