京都大学大学院医療経済学分野教授の今中雄一氏らの研究グループは、新型コロナウ イルス感染症(COVID-19)の流行により、2020年4~6月における飲酒関連の肝疾患や膵炎による入院率が流行前の期間と比べて約1.2倍になったとする研究結果を、Sci Rep2021; 11: 14054)に発表した。女性では増加がより顕著に見られ、2020年6月には前年同月の倍だったと報告した。

4~6月の入院率:男性1.1倍、1.2倍、1.2倍、女性1.4倍、1.9倍、2.0倍

 COVID-19の流行により社会的距離の維持や都市のロックダウン、経済的な危機に伴うストレスからアルコール消費量の増加が懸念され、世界保健機関(WHO)などは有害なアルコールの消費について警告を発している。総務省の家計調査報告によると、2020年4月以降、世帯のアルコール支出が前年に比べ40~50%増加している。

 研究グループは同分野のQuality Indicator/Improvement Project(QIP)のデータベースを用いて、入院日が2018年7月1日~20年6月30日におけるアルコール関連の肝疾患および膵炎による入院率と入院1,000件当たりの件数を調べた。

 全体で302万6,389例の入院が発生し、うちアルコール関連疾患の入院は1万242例(肝疾患6,371例、膵炎3,871例)だった。解析の結果、COVID-19の流行時の2020年4~6月の入院率は、流行前の2018年7月~2020年3月)と比べ約1.2倍に増加していた(率比1.22、95%CI 1.12~1.33)。

 COVID-19が流行しなかったと仮定したモデルでは、2020年4月~6月のアルコール関連肝疾患または膵炎による入院は、986件と推計されたが、実際には1,200件の入院が発生しており、214件以上の過剰入院が発生したことが示された。2020年4月~6月の入院率を前年同時期と比較すると、男性では4月が1.1倍、5月が1.2倍、6月が1.2倍だった。それに対し、女性ではそれぞれ1.4倍、1.9倍、2.0倍と男性に比べ増加の程度が大きかった。この理由について研究グループは、「COVID-19の流行下において、女性がより経済的な影響を受けている可能性が示唆されているため、経済的な影響の性差を反映している可能性がある」と考察している。

 今回の結果を踏まえ、研究グループは「大規模データベースを用いた研究でCOVID-19の流行が飲酒に関連する肝疾患や膵炎の入院率上昇に関連している可能性が示された」と結論。その上で、「COVID-19の流行が収束しない状況において、飲酒関連肝疾患や膵炎の増加が続く可能性があり、自粛期間中の飲酒には注意する必要がある」と指摘している。

(小沼紀子)