東京五輪は新型コロナウイルスのあおりで史上初めて延期され、世論の賛否を抱えたまま開催へ突き進んだ。この間に大会組織委員会などが講じた策に現代の五輪が抱えるひずみが表れた。
 昨秋、延期に伴う経費削減とコロナ対策のための簡素化52項目が示された。仮設設備の見直しや関係者数の削減などにとどまり、削減額は300億円で当時の大会経費のわずか約2%。「東京モデル」と胸を張るも、肝に踏み込めなかった。
 聖域はないとしながら、競技や選手の数には手をつけなかった。東京では33競技339種目、約1万1000人に増えた。これこそ五輪肥大化の根源。組織委幹部は「競技と選手の数を減らせなければ経費削減には限界がある」と嘆いた。
 延期の追加経費は、簡素化による削減額を反映しても2940億円に上った。経費削減のため既存の会場を増やしてきたことで、皮肉にも延期による賃借料や営業補償費がさらにかさんだ。
 選手や競技の数が変わらなければ追加でかかる経費は掛け算で跳ね上がる。ほぼ無観客になったものの、大会が巨大になったことで、コロナ対策のバブルや医療体制の確保などを難しくした。
 開閉会式の縮小は放映権契約を理由に国際オリンピック委員会(IOC)が難色を示し、参加人数減にとどまった。聖火リレーは公道での走行中止が相次いでも日数を維持。五輪財政を支えるテレビ局やスポンサー優位が、にじみ出た。
 肥大化と商業主義を見過ごした簡素化を「宣伝活動にすぎない」と海外の識者は断じる。前例のない有事に、積年の難題があぶり出された。 (C)時事通信社