新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言下の強い逆風の中で東京五輪が開幕する。菅義偉首相は「安心安全な大会」実現を唱え、感染抑止と大会成功の両立を目指す。一方、足元の感染状況は悪化し、大会関係者の感染も相次ぐなど目標達成は容易ではない。結果が伴わなければ首相が政治責任を問われるのは必至で、政権内には緊張感も漂う。
 首相は東京五輪について「やめることは一番簡単なこと、楽なことだ」とした上で「挑戦するのが政府の役割だ」と強調。「感染者数なども、海外と比べると1桁以上といってもいいぐらい少ない」と指摘した。20日に行われた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで語った。
 22日の東京都の新規感染者は1979人に上り、今年1月以来の高水準となった。感染症専門家からは「来週中には3000人超となる」との予測も出ており、医療逼迫(ひっぱく)を含め、さらなる状況の深刻化も指摘される。
 こうした中、政府が五輪に関する感染対策の要と位置付けるのが、入国した五輪関係者と国内の一般人の接触を遮断する「バブル方式」の徹底。首相は国内感染が悪化しても「大会には影響しなかった」と評価できる結果を残したい考えだ。
 しかし、関係者の陽性が連日のように確認され、選手らのクラスター(感染者集団)発生による「バブル崩壊」は現実味を帯びつつある。首相が目指す「安心安全な大会」は見通せない。
 五輪は開催する一方、国内の大規模音楽イベントや地域の運動会などが中止となる「矛盾」も露呈。報道各社の内閣支持率は軒並み、政権発足後最低水準に落ち込んでいる。
 首相にとって1年延期となった五輪は、安倍政権から引き継いだ最重要案件の一つ。国威発揚と経済効果を当て込み、秋の自民党総裁選や衆院選の追い風とする目算だった。だが、4度目の宣言に追い込まれ、政権内でそうした期待は失われつつある。
 首相は23日、国立競技場で行われる開会式に出席するが、一般観客の姿はなく、熱気や祝祭ムードを感じ取るのは難しいとみられる。首相は大会期間中も公務を優先し、競技の現地観戦は行わない予定。五輪の行方はテレビなどを通じて見守ることになる。 (C)時事通信社