天皇陛下が東京五輪開会式で述べられた開会宣言は、五輪憲章の邦訳で定められた「祝い」に代わり「記念する」との表現になった。識者は「コロナ禍で五輪開催への賛否がある中、どちらにも配慮した苦渋の選択だろう」と指摘する。
 五輪憲章は五輪の政治利用を禁じており、開会式について「開催地の国の国家元首が以下の文章を読み上げ、開会を宣言する」と宣言文も指定。前回1964年の東京大会で、昭和天皇は憲章通り「第18回近代オリンピアードを祝いここにオリンピック東京大会の開会を宣言します」と日本語で述べた。
 一方、今回の開会宣言で公表された英文は「celebrating」と従来通りだが、陛下は「記念する」と述べた。
 今大会は新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期となった末、緊急事態宣言下でほとんどの会場で無観客という極めて異例な経緯をたどった。6月には西村泰彦宮内庁長官が、大会開催によって感染拡大につながることを「陛下が懸念されていると拝察している」と述べ、波紋を呼んだ。
 名古屋大大学院の河西秀哉准教授(日本近現代史)は「国を代表する立場として開会宣言をしなければいけない一方、感染拡大を懸念し、国民統合の象徴として『祝う』という表現はそぐわないとの陛下のお気持ちもあるのではないか」と分析する。
 その上で、「政府は五輪憲章で陛下の出席や宣言文が規定されていることを、国民にきちんと説明しておくべきだった」との見方を示した。 (C)時事通信社